高速取引や実現したい取引の執行などは、もはや人間がAIや機械に勝てることはないでしょう。
しかし、長期判断や経営判断は、AIが今の仕組みである限り、人間に勝てる可能性はありません。
仕組みが全く違う以上、得意なことも全く違うのです。
スパークス・アセット・マネジメントの上席研究員であり人工知能学会でもご活躍されている、水田さんのおそらく初めての一般向けの書籍です。
ほとんどの業者が秘密主義のため実態が謎に包まれており、とかく悪者にされがちな「高速取引」の実像と功罪を、当事者ではなくあくまで中立な立場から可視化してくれた貴重な本です。
例えば、取引所との緊密な関係が描かれていたり、米国の事例をもとに、なぜネット証券の取引手数料が無料になっているのかについての種明かしもなされるなど、大変興味深い世界の一端を垣間見ることができます。
また高速取引だけにとどまらず、
- 株式とは何か?お金とは何か?
- AIとは何か?
- AIが得意なこと
(データがたくさんあればあるほど、同じことが安定的に繰り返し起きれば起きるほどにその強みを発揮) - 人間にしかできないこと
(少ないデータで文脈をとらえること、過去に同じようなことがなかった環境で決断すること) - 金融犯罪もAI、その取り締まりもAI
など話題は多岐にわたり、そしてそれぞれが深く、昨今の私の問題意識にミートしまくりやがります。
高速取引の功罪、人間とAI、どちらか一方に肩入れするようなこともなく、全体を通じて文章のバランス感が素晴らしいですね。
読み終えて、「やはり人間がやるべき投資は、長期投資だ」という意を改めて強くしました。
「高速取引」を題材とした本ではありますが、むしろ長期投資を志す方にこそ読んでいただきたいです。
実は私が投資哲学を固めていく過程において、2018年に水田さんが書かれたスパークスのレポート(下部リンク記事ご参考)から大きな気付きをいただいたという経緯もあり、この出版を楽しみにしておりました(私と同じ編集者さんでもありましたので、前々より伺っていたのです)。
そう、株式投資とは、価値が不明なお金を、価値が明確な企業へ変換する作業なのです。
「お金とは何か」について真剣に向き合うことで、社会貢献としての株式投資の役割や、高速取引やAIが裏方としてその営みをスムーズにしている構造も見えてきます。
本書を拝読し、ますます水田さんのファンになりました。
(ご参考)
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