是川銀蔵『相場師一代』を読む。

読書

波乱の95年(1897年~1992年)を駆け抜けた、「最後の相場師」是川銀蔵の自伝です。
是川氏は日本セメント、同和鉱業、住友金属鉱山などの仕手戦で勇名を馳せたことで知られています。

「そこで私は自らの人生を自らの手で綴ることにより、株で成功することは不可能に近いという事実を伝える使命があると思い、筆をとることにした。」

自らの生きざまを否定するかのようなこの執筆の動機が、まず面白いです。


さて是川氏とはいったい何者だったのでしょうか?

この本で何度となく記されている冷徹な状況分析と、勝負どころでの異常な集中力はまさに「相場師」そのものですが、それ以前に経済の研究家であり、何より日本の繁栄を願う社会事業家でもありました。

ここでは詳述を避けますが、その行動力は凄まじく、普通の人間の何周分にも相当する人生の濃さをこの本で知ることができます。

一方で、「まるで相手の弱みを握り、口先だけで安く買い上げているようなものである」などと、不動産買収の後味の悪さを吐露したり、同和鉱業の仕手戦においては、相場の沸騰の中で「欲ボケ」により手仕舞いのポイントを高値に修正し続け、結果的に儲けを吐き出してしまったり、税制への不満から所得をごまかして過小申告してみたりと、妙に人間臭い面もありました。

「相場」に興味は無くても、人物としての多面的な魅力から、読み物として単純にのめり込める面白さがあります。


その手法に関して言えば、リスクジャンキーである部分はとても真似できるものではありませんし、是川氏も「株により巨万の富を得、大金持ちになって豊かな生活がしたい、という目的でやったら必ず失敗する」と書いています。

それでも、取り組み方は違えど、学ぶべきところも多いです。

特に、

「”自分だけの情報を集め、二合目、三合目で買い、じっと待つ“ これが株式投資の妙味であり、原則である。」

のくだりなどは、もう同意しかありません。

自粛を迫られるこのゴールデンウィークに、楽しくて生きる活力を与えてくれる本に出会えたことは幸運でした。

誇張や自慢話も、このレベルにまでなると痛快です。
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