【3835】eBASE ~ 暴落をどう考えるか(2)

企業研究

eBASEの価値提供の本質とは。

eBASEが主体となって取り組んでいる「企業間商品情報交換の標準化」は、なかなか言葉で説明するのが難しいものがあります。

それだけに「なんだかよくわからないけど凄そう…」程度のイメージに留まってしまう方が多いのも、無理はありません。

ただここはストロングホールドできるか否かの分岐点になりますので、当社が提供している資料を使ってしっかり説明しておきたいと思います。

商品情報交換の仕組みと意義。

まずeBASEが存在しなかった世界の話から。

一例として、スーパーのチラシがどう作られていたかを見てみましょう。

こうしてみると、一つの食品メーカーと、そこの商品を使う複数の食品スーパーが、それぞれ全く同じこと(撮影&商品仕様入力)をやっていたのが分かります。

しかも情報のやりとりは、食品メーカーと各スーパーの間で、それぞれ個別に行っていたのです。

食品メーカー側にとっては、食品スーパー各社に対して同じ対応を繰り返すわけですから、非常に面倒で非生産的ですよね。

食品スーパー側も、食品メーカー各社に対して商品情報を請求していかなければなりませんから、同様です。

全ての食品メーカー、全てのスーパーがかつてはこうせざるを得なかったのですから、業界の中で膨大なムダな作業が生じていたということになります。


一方、eBASEが構築してきたプラットフォームを使えば、以下のように変えることができます。

食品メーカー各社(登録会員)が、無償版の「eBASE(eBASEjr.)」を使い、1回だけ 商品の撮影・仕様入力を行う。
    ↓
情報共有サーバーである商品情報データプール(クラウドの「食材えびす」)に、データを一括提供。
    ↓
食品スーパー各社(利用会員)はここから必要な商品情報をだけを「eBASE」で収集し、あとは売価等の各社固有のデータを入力した上で、チラシを制作。


こうして見ると、業界全体で考えれば、劇的に必要な作業が減ったのが分かりますね。

このプラットフォームの役割を商品情報の卸売と考えると、よりイメージしやすいかと思います。

一般的な意味での卸売業、すなわち「モノ」の卸売業の存在意義を図示すると、以下になります。
(図はKEEP ON MOVINGさんからお借りしました)


卸売業としての機能一つにメーカーと小売業店舗を結ぶ線の本数を減らすというものがありますよね。
まさにこれが実現できるわけです。

加えて「商品情報」に関して言えば、流通する内容の正確性が求められています。

一例として下図をご覧ください。

流通の各段階をまたぐ「伝言ゲーム」!

この中のどこかで情報を誤ると、業界全体で大惨事世界大戦が勃発しかねないのがよく分かるかと思います。

eBASEがもたらす貢献。

結局のところ、このプラットフォームを構築したeBASEの目的とは何だったのでしょうか?

私が思うそれは、原料メーカー-メーカー-卸-小売-消費者 の間を網の目のように複雑に流れる商品情報について、正確に・低コストで・迅速に交換できる環境を提供すること、すなわち商品情報交換を標準化することによる、業界の全体最適・効率化です。

・入力ミスがなくなり(情報の品質向上)、作業工数が劇的に減り、瞬時に商品情報の伝達ができる。

・情報伝達がスムーズだから納期短縮につながり、流通各段階での在庫水準も抑制できる。

こう考えると、各業界における貢献は計り知れないものがありますよね。

eBASEのビジネスモデル。

さて、ここで気になるのは、eBASEがどうやって収益を上げているかです。

まずはデファクト化。

実はこの仕組みそのものからは、利用料をほとんど取っていません。

メーカー側の登録に関しては無料ですし、商品情報データプールの利用料は月あたりわずか数万円です。

商品情報交換プラットフォームの ほぼ出口の部分のみでマネタイズすることに徹している 形になります。

そうまでして、この プラットフォームのデファクト化 に努めているわけです。

いったん実現してしまえば、他所がこれ以下のコストで新たにプラットフォームを構築することは、事実上不可能になります。

低廉に利用できることで利用者が増え、利用者が増えることでワンストップでの情報収集がしやすくなり、圧倒的な情報量によって利便性がさらに増していく。

このネットワーク外部性を活かし、業界ごとにエコシステムへの加入を促す仕組みを作り、社会貢献につなげていく。

素晴らしいではありませんか。

有償版アップグレード&ワンストップでのソリューション提供が鍵。

出口で「eBASE」の登場となります。

デファクト化が奏功するとはいえ、導入する目的が単なる商品情報管理だけでは低価格版に留まってしまうので、そこからいかに顧客のニーズを汲み、有償版のアップグレードへとつなげられるかが鍵になります。

展開可能なソリューションのイメージは以下の通りです。

紙・Webメディアの制作支援、営業活動支援、販売・物流・生産管理といった基幹系システム構築支援といった辺りが、主なソリューションになります(他にも色々あるのですが、ここでは割愛します)。

収益性を高めるには、パッケージ単体販売に留まらず、いかにワンストップでのソリューションを網羅的に、複雑に絡められるかですね。

それがいったん実現してしまえば、サーチコスト(同じことをしようとした場合の、情報収集や代替サービスを探すコスト)が上がり、ストック性は盤石なものとなります。

私がeBASEに惚れた理由。

実は「eBASE」は外部に向けてインターフェース開示を行っているため、商品情報交換プラットフォームは「eBASE」低価格版を利用しつつ、バックエンドの商品データベースシステムは他社製品にするといったことも可能です。

この開示がなければ、ガチガチの囲い込みによってアップグレードは確実なものとなります。

ただ単なる独占ビジネスとなってしまっては、ユーザー企業の選択肢が狭まり、自由競争もなくなって、中長期的には社会から見放されてしまうとして、当社はその方向性をあえて捨てたのです。

この気概には心底惚れましたね。

もちろん、これは以下を背景とし、当社側に他社へ乗り換えられないだけの自信があってこそです。

  • どこよりも先駆けて商品情報の流通にまい進し、先行的に知見を獲得してきたこと
  • 業界別の要求に特化する形で、商品情報管理パッケージを開発してきたこと
  • これらを通じて、ユーザーエクスペリエンスを高める不断の改善を行ってきたこと

企業間商品情報交換の領域においてレイヤーマスター(※)となりつつも、決してその立場にあぐらをかこうとせず、各業界の健全な発展に貢献すべく、自らを磨き続ける姿勢には本当に頭が下がる思いです。

※レイヤーマスター:バリューチェーンの一機能に特化し、その機能で圧倒的な規模を獲得することによって、主に規模の経済や経験量による好循環により、その機能を支配してしまうビジネスモデル。

ここまでを含めて、高い参入障壁を築いているというところが真骨頂です。

そして何より素敵だと思うのが、企業理念。

  貢献なくして 利益なし
  利益なくして 継続なし
  継続なくして 貢献なし

社会貢献できる事業でないと、利益を得る事はできない。
利益を得られる事業でないと、継続する事はできない。
継続できる事業でないと、社会貢献にはならない。

この理念がしっかりと落とし込まれた諸々の価値創造の作り込みが自分の中で腹落ちしてくるにつれ、ますます容易には売れない身体となってしまいました(苦笑)

次回はeBASEの想像可能な未来について、そしてそれを私はどう評価しているのかについて述べてみたいと思います。

(続く)

やはり分析記事は楽しいです。前回はおかげさまでたくさんの方に読んでいただき、モチベーションが上がりました。
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コメント

  1. 伏見の光 より:

    興味深く読ませていただきました。つまりは「本質」とはなにか、それはビジネスモデルとか参入障壁とかそういうことになっていくのでしょうが、ということで、インベストメントの視点での超長期投資を考えるのであれば、やはりここを理解しておくことは必須だと思います。

    よく、子どもが「なんで?」「なんで?」と質問を繰り返し、大人が回答につまってしまうようなことがありますが、投資においても、複数回、この「なんで?」を繰り返すと、本質的な問題にいきつき、そこをどう理解できるか、納得できるかということが投資対象としての適格性を判断する根拠になるのだろうと思います。

    今日、ちょっとここを買ってみようかと思いましたが、やめました。
    「人」の銘柄は、飛び乗っても、確信が自分の中にないので、すぐに飛び降りてそれまでとなってしまうことが多いですので(^_^;)。

    エスプールの障がい者就労支援事業でも、オリンパスの内視鏡でも、朝日インテックのカテーテルでも、エランの入院セットでも、自分の中で一回認識をくぐらせて理解してから投資対象とするというのを心がけています。

    • 6_suke より:

      ありがとうございます。

      「なんで?」の繰り返し、分からなければIRに照会するなどして、自分の中で腹落ちさせる。

      これは大事ですよね。

      私も試しに飛び乗ってしまうことはあるのですが、やはり確信できない中で早売りしてしまうケースが多い気がします。

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