【3835】eBASE ~ 暴落をどう考えるか(1)

企業研究

金曜日に東証1部トップの値下がり率▲18.64%を叩き出し、また茂木外相の32万株保有が改めて報道されたことにより、(私のTL上で)一躍話題沸騰となった【3835】eBASE。

場中の発表において、2Qの減収減益(売上高▲6.9%、経常利益▲22.0%)、非開示であった通期予想も減収減益(売上高▲6.6%、経常利益▲17.3%)となったのが直接的な暴落の原因ですが、まずは脊髄反射的な動きが出たという印象です。

この暴落についてどう考えるか、この週末で私なりに整理した内容を3回に分けてまとめておきたいと思います。
お伝えしたい内容は以下の3点です。

  1. 暴落はなぜ起こったのか。
  2. eBASEの価値提供の本質とは。
  3. eBASEの未来をどう考えるか。

暴落はなぜ起こったのか。

eBASEは、大きく分けて以下の2つの事業を有しております。

eBASE事業:商品情報管理システム開発販売事業(収益を支えるメイン事業)
eBASE-PLUS事業:IT開発アウトソーシング事業

イメージとしては、前者が毎期安定的なストックビジネスがメインで、後者がいかにも波の大きいフロービジネスがメインのように見えますが、実態はだいぶ異なります。

ここに今回の悲劇の発端があります。

後者はeBASE事業を、開発・オペレーションの受託、サーバー保守といった業務によって裏で支えており、外部売上の繁閑を吸収可能なことから、業績はeBASE事業の業容拡大に応じた形で緩やかな安定成長の傾向を示しています。
また、実はeBASE本体の開発部門への人材供給源ともなっております。

問題は前者です。
まずeBASE事業における、通期の種類別販売実績推移を見ていきましょう。

販売実績の推移から見えてくること。

販売の種別で見ると、フロービジネスのパッケージソフト・カスタマイズ・その他、ストックビジネスのクラウドサービス・ライセンス&保守費に分かれており、実際にはフロービジネスの割合が過半を占めます。

うち、カスタマイズについては、パッケージソフトが導入された顧客に対し、適宜オプションサービスを入れていく形ですので、「準ストックビジネス」とみなしてもいいかもしれません。

ただいずれにせよ、初期のパッケージソフト導入状況に各期の業績が大きく左右される体質には変わりがありません。

これまでは当社がブルー・オーシャンを開拓する形で食品業界・日雑業界への浸透が進む局面にあり、右肩上がりの成長が続いておりましたので、収益構造の実態を気にしなくても良かったのです。


次に、2Q時点での種類別販売実績推移を見てみます。

ストックビジネスと「準ストックビジネス」のカスタマイズは、今期を含めてもなだらかな増加傾向を示しております。

一方で、通期の推移では比較的きれいに増収傾向が見てとれたパッケージソフトに関しては、2Q時点で切ってみると各期でかなり凸凹があります。

これは顧客の決算期末(主に2月・3月)を納期として導入を進めていく傾向があり、どうしても売上計上が4Qに偏りがちだからです。

したがって、2Qの時点で期中の業績に一喜一憂するのはナンセンスであり、大きく売られることがあれば「買い」が正解、というのがこれまでのパターンでした。

一過性の減収減益と考える理由。

では今期はどうでしょうか。

コロナ禍を受けた今期特有の事象として、以下の変化が生じております。

  1. 顧客との商談・開発設計の打ち合わせの遅れ。
    ~ IR照会をした印象では、face to face のコミュニケーション不足はやはり大きい模様です。

  2. 受注から納品、検収における遅延。

  3. (成長著しい住宅業界向けに関して)導入事例紹介の機会損失。

  4. 顧客側における意思決定の判断が遅滞(市場動向の見極めが必要)。
    ~ 特にインバウンド需要を当てにしていた都市型のドラッグストアは、先行きを慎重に見ざるを得なかったでしょう。

  5. 顧客側における今期予算縮小の動きが発生(IT投資の先送り。来期以降に持ち越し)。
    ~ 顧客側が予算を決める段階では、コロナ禍の不透明感は今より大きかったと思われます。

通常の期であればパッケージソフト導入については4Qに向けてスパートをかけるところ、今期に関しては上記の複合的な要因があり、少なからず来期以降への持ち越しが発生する見込みです。

要するに、ラストスパートが間に合わないということです。

需要が消失したということではなく、今期減収減益予想は「コロナ禍を受けた、パッケージソフト導入の期ずれによる一過性のもの」とみなすのが妥当でしょう。

期初に業績予想が非開示であったのも、以上のことを踏まえれば理解できます。

それでも例年の傾向を踏まえると(保守的な予想をしがちで、上方修正の常連)、上方修正は十分ありうる水準とは見ています。

加えて、顧客側の判断が好転し、税負担を抑制するために利益の上がっている今期に間に合わせようとする可能性も考えられます。

投資家としてどう判断するか。

次回以降で述べますが、事業の社会に対する貢献は非常に大きく、またビッグデータを扱うプラットフォーマーとして未開拓の潜在的市場も有しており、長期的な成長可能性に陰りが見えたわけでは全くありません。

むしろ事業報告資料からは、住宅業界での裾野の着実な広がりを感じさせる記述すらありました。

そもそも種類別販売実績の推移が示す通り、パッケージソフトの販売は、その後のカスタマイズ、及びクラウドサービス他のストックビジネスへと着実につながっていきます。

一時的な停滞によって今後の価値上昇を見逃してしまうのは、大変もったいないことです。

今回暴落が起こったのは、上昇トレンドに乗っかったトレーダーの見切りの部分が大きいのでしょう。
事業実態の把握以前に、値動きが全てと言っていいですから。

ただ投資家としては、当社売上構成の特性からして、1期の業績だけによる性急な判断は避けるべきだと考えています。

次回は一見分かりづらい当社の価値創造の本質と、ビジネスモデルの作り込みの凄さについても述べていきます。

(続く)

今シリーズはオールドスクール回帰です。思えば昔はアフィリエイト狙いではなく、真面目に銘柄分析をしていたブログがたくさんありましたね。。
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