コロナ・ショックから株価はだいぶ戻してきましたが、こと主に優待目当てで買われている株に関しては、概ねその戻りが他と比べて鈍く感じられます。
優待があれば多少経営状態に難があっても株価がかさ上げされてしまうような「優待株バブル」が崩壊し、企業本来の実力によって明暗が分かれてしまっている印象を受けます。
株主優待制度の目的
そもそも、株主優待ってなぜ存在しているのでしょうか。
これには主に3つの理由があると考えています。
- ファン作り
- 安定株主の確保
- 株主数の増加・維持
(1)は株主優待を通じて自社の商品やサービスを利用してもらうことで、顧客としても自社のファンになってもらい、業績の向上を図るという目的です。これは昔からありますよね。
現在、全体の約4割が株主優待制度を導入しているそうですが、(2)(3)の目的と思われるものが増えてきています。
自社商品・サービスに関係のないカタログギフト(某優待倶楽部を含む)や金券類の優待が典型的です。
コーポレートガバナンスに対する意識の高まりもあって、各企業は政策保有株・持ち合い株の解消が求められている中、その受け皿として個人投資家が期待されているケース(2)。
あるいは、上位市場への指定替えや現市場への上場維持のための株主数の基準クリアを目的とし、「頭数」として個人投資家が期待されているケース(3)。
注意しなければならないのは、(2)(3)に関しては目的が果たされれば、あっさり廃止・改悪されるリスクがあることです。
(1)に関しては(2)(3)に比べると可能性は低くなりますが、業績が大幅に悪化すれば、背に腹は代えられないとばかりに、やはり廃止・改悪されるリスクがあります。
いずれにしても、株主総会の手土産と一緒で、企業側の一存で決められてしまうのが恐ろしいところです。
「株主優待目的メイン」で投資することの、見返りに対するリスクの大きさを感じざるを得ません。
株主優待実施企業の弱点
そもそも、株主優待を発行している企業は、外食・小売・ホテル等が典型的ですが、気の移ろいやすい消費者相手で参入障壁が低い一方、固定費はそれなりにかかるような企業(→業績のボラティリティ大)が多いです。
景気が悪くない時であれば、利益率が高くなくてもなんとか回すことはできるでしょう。
ただし、コロナ・ショックのように全体の需要が一気に縮む局面では、経営力の優劣や顧客ロイヤルティの有無によって、残酷なまでに勝ち負けがはっきりしてしまいます。
そして「優待利回り」「総合利回り」の数字も空しく、業績が痛んで展望も見えない「負け組」は、株価もなかなか戻ってきません。
実際、最近は減配や優待の廃止・改悪なども目立ちますよね。
株主優待とどう付き合うか
長期投資を行う上では、参入障壁の存在が大きな支えとなります。
一方、株主優待を導入する企業には、参入障壁が認められる企業の方が少ないように思えます。
参入障壁が無く企業としての魅力が乏しい(魅力を感じてもらえる株主が集まらない)からこそ、悪い言い方をすれば「優待で釣る」ケースが多いのだと考えてしまいます。
私の場合、株主優待に関しては以下のような企業の株を中心に、ほどほどに付き合っていくつもりです。
- なんらかの競争優位性を感じられる企業
(優待がなかったとしても投資を考えられる企業。例:MonotaRO、神戸物産、エレコム、丸井グループ) - 自分の行動範囲で無理なく使える、自社商品・サービスを優待としている企業
(ただし短期目線。何かあればすぐ逃げる意識で。例:旅客運送業、コーヒーチェーン店)
「優待生活」は確かに楽しそうではあります。
ただ優待株を手広く分散して保有することは、必然的に「負け組」も多く組入れてしまう形になってしまいがちなので、安定収入源をなくした私としては、ここはひとつ慎重に考えたいところです。
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