【3835】eBASE が決算短信とともに出している「決算と事業報告」について、2021/3期分は大きな変化が見られました。
個人的には、将来を占うヒントがこの資料の中にいくつもあると感じましたので、ここにまとめておくことにします。
BtoBtoCモデルの明確化
P.7が新たに加わりました。
これまで「eBASE事業の中長期戦略」としていたページは「eBASE事業のビジネスシナリオの経緯と現状」(P.6)となり、既に事業戦略は新たなステージに入ったことをうかがわせます。
ここでの大きなポイントは、特許を活用しながら「BtoBtoCモデル」を推進していくことを、明確に打ち出した点です。
つまり、「消費者(C)の属性・購入情報」、「小売企業(B)のDX・マーケティング」、そして「eBASEが排他的に収集・管理している商品情報」を有機的に結び付けたビジネスに注力していくという決意が見られます(⇒Personal Profileビジネス)。
その意味で、購入情報・家族情報・商品情報を組み合わせ、商品の購入情報から購入者の家族情報のプロファイリングを可能とする、(未活用と見られる)特許第6807105号は大変楽しみです。
これを活用することで、例えば小売企業のネットスーパーで、本人及び家族の持つアレルギー情報や健康志向、購買履歴に応じて、Amazonのように精度の高いリコメンドができるようになることが想定されます。
これは消費者にメリットがあるだけでなく、品揃えの高度化・廃棄ロスの抑制といったことにもつながりますので、小売企業にとっても大変ありがたいお話になります。
だからこそ小売企業としては、eBASEを本格導入したり、既導入先についてはより有効に活用しようという話になっていくわけですね。
そしてeBASEが消費者向けアプリ群を用意したのも、小売企業側のメリットにつながる部分として、店舗やECへの誘導といった「消費者の属性を利活用する」という側面があろうことも、この図から理解できるかと思います。
なお、ページ右下の「各種新サービスの基盤となる特許戦略」ですが、その他の特許も今後のサービスの新たな方向性を示唆するものとなっており、なかなか興味深いものがあります。
「新規・既存別」販売実績の推移
これまでは種類別の販売実績に関しては、P.10の「フロービジネス」「ストックビジネス」で大別されていました。
たたこの区分だと、「ストックビジネス」が5割弱に留まるため、業績の下方硬直性を説明しづらいという難点がありました。
今回はP.11の通り、「新規・既存別」のページを追加してきました。
IR担当さんにこの狙いを確認したところ、
実質的にはeBASEのビジネス収益構造が「リカーリング(≒既存顧客へのアップセル/クロスセル)ビジネス」であること
を正しく伝えたい、というものでした。
私の「ケーキ理論」で言えば、スポンジケーキを既に売ったところからの収入(ストック&アップセル)が全体の8割を占めているのが現状です。
スポンジケーキを売るため、業界別にデファクトを確立していくとともに、呼び水となる魅力的なトッピングも用意しておく。
スポンジケーキを売った後も、追加でトッピングを購入していただく。
そのために、新たなトッピングの開発・リリースを継続的に行っていく。
これがeBASE事業の基本戦略と言えます。
そしてこのスポンジケーキもトッピングも、20%は毎年「ライセンス&サポート費」でストックとして積み上がるので、年々「いいベース」が構築されていくということです(おそまつさまです)。
また、トッピング自体を非常にお求めやすい価格に設定、それを年々充実させていくことで離れ難くし、スポンジケーキのスイッチングコストを高めている点も、eBASEの凄みを感じる部分です。
こういった一連の流れが、「アップセル」の大きさを示すこの図が加わったことで理解しやすくなりました。
2021/3期の減収要因
こうして見ますと、2021/3期の減収要因は「アップセル」の不振によるものであったことが明らかです。
まさに、コロナ禍による商談遅延(おそらく既存顧客へのアップセルは、新規に比べ、細かなすり合わせがより必要な面があると思われます)の影響ですね。
一方、「完全」新規(20%)の積み上げの方は堅調でした。
これは今期以降のストック&アップセルへと着実につながっていきますので、明るい材料となります。
今後の業績フォローにおいては、先行指標として「新規」の増え方、「既存」とのバランスを見ておくことが重要だということも、この資料からは読み取ることができますね。
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