松田千恵子『サステナブル経営とコーポレートガバナンスの進化』を読む。

読書

企業でガバナンスに携わる人のバイブルとなっている、コーポレートガバナンス・シリーズ本の第三弾です。

「コーポレート・ガバナンス」と聞くと、小難しいイメージがあって敬遠しがちな方も多いかと思いますが、なにせ「難しいことは言わない」「綺麗ごとも言わない」「何かあればイチから説明する」の三原則を大切にしている著者ですので、面白がって読むことができます。

はじめは最新の状況(コーポレートガバンス・コードの再改訂、東証市場改革等)の解説が多くて少し読みづらい部分はありますが、読み進めるにつれて経営全般について網羅的に「指南」する内容となっていき、ページを繰るスピードが加速していく感じです。

とにかく言葉が強くて、明快で痛快。
例えば以下のような感じです。

多角化企業がその存在を主張できるのは、一つには事業間でのシナジーが実現していること、二つ目にはそれら事業を束ねる本社が、巷の投資家よりも投資家能力に優れており、より高いリターンを生むポートフォリオ管理を行っていることが証明されている場合だけです。


大変わかりやすいですね。

「グループ経営において、本社が外部投資家以上の手腕を持って、事業ポートフォリオ管理を行う能力があることを見極めること」

これはコングロマリット的な大企業への投資を検討する際に、重要な視点です。

本社に投資家的機能を求めているのに、モニタリングがまともにできていないような企業グループには投資してはいけませんね。
(余談ですが、その機能をサポートするアバント社の存在意義も改めて実感致しました。)

企業における経済的価値の向上と社会的価値の実現は、例えて言えば富士山をどこから見るかといったようなものではないでしょうか。


美しい一つの霊峰を、静岡県側から見るか、山梨県側から見るか。

わかりにくいESGを戦略と統合した上で将来の姿を見せることが企業には求められますし、そこを上手に表現できている企業にこそ投資したいものです。

よく考えてみれば、いい歳をしたオジサン・オバサンになるまで「総合職」という名のもとにジェネラリストとして横並びレースをさせられ、経営陣にはなれないことが分かった頃にはそろそろ定年、という人事制度こそ非人道的です。


素晴らしい!よく言った!
(なお、この慣行こそが、日本におけるFIREブームの裏側に大きく横たわる存在であると認識しております。)

コーポレートガバナンス改革のお話をマネジメント改革のお話へとつなげ、最後は「個人の生き方」にまで結び付ける筆致にうならされます。

人的資本のあり方にも重きを置く「文系脳」の個人投資家にも刺さるかと思います。



《ご参考 ~ 指名委員会等設置会社である、荏原製作所の株主総会の模様。ガバナンスのあり方として興味深いです。》

楠木建教授の本が好きな方にもオススメです(なんとなく通ずるものがあります)。
にほんブログ村 株ブログ 株 中長期投資へにほんブログ村 株ブログ 株主優待へにほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ
↑ ポチっとお願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました