徳成旨亮『CFO思考 日本企業最大の「欠落」とその処方箋』を読む。

読書

著者の2社(MUFG、ニコン)でのCFOの経験をもとに、これからの時代のCFOのあるべき姿と身に付けるべき「CFO思考」について論じられた本です。


・日本経済から失われた「アニマルスピリッツ」(実現したいことに対する、非合理なまでの期待と熱意)を取り戻すには、CFOが経理・財務担当としての役割だけでなく、企業成長のエンジンも務めることが求められる

・CFOが安全第一でブレーキを踏み続ける「金庫番思考」(このワードセンス、ナイスですね!)の持ち主なのか、CEOのアニマルスピリッツを何とか実現させたいと考え、「リスク」「資本」「収益」のバランスを取りながら案件を推進できる条件を工夫する「CFO思考」の持ち主なのかによって、企業価値は変わる。

・CFOは孤独なCEOのビジネスパートナーであるべきで、最大の批判者でありかつ最大の支援者であるべき。健全性を守る最後の砦でありつつも、許容しうるリスクを把握しながら「リスクアペタイト(*)の空き枠」の利用を積極的に促していくべき

*自社が事業戦略や財務計画を達成するために、リスクキャパシティの範囲内で進んで引き受けようとするリスクの種類と水準のこと。

・CFOは「顔役」でもあるので、社内と社外の結節点に立って、双方に刺激を与えることで企業価値向上に貢献するんだ、という熱量が必要。


要旨はこんなところでしょうか。
CFOに対するイメージが覆るほどの熱意を感じます。

昨今のCFOを取り巻く環境の変化に関する解説ばかりではなく、強烈な問題意識による著者なりの提言があり、MUFGのグローバルM&A、ニコンのターンアラウンド(経営改革による業績回復)の舞台裏についても生々しく描かれていたりして、単純に読み物としても面白いです。

基本的には、経営者視点を身に付けるべきビジネスパーソン向けの本だと思いますが、投資家の立場からしても大変有意義な本であるという印象を受けました。

というのも、投資家のカウンターパートたり得るCFOが普段何を考え、どんな規律に基づき活動しているのかという「生態」、そしてその理想形について学ぶことができるからです。

気概のあるCFOがいらっしゃる企業に投資し、有意義なコミュニケーションを図りたい(株主総会ではCEOだけでなく、CFOにも直接質問してみるのもいいかもしれませんね)と、改めて思わせてくれる本でした。

企業分析をする上で、CFOの存在感についてもチェックしていきたいと思いました。
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