C/F→B/S→P/L(3)~ B/Sでビジネスモデルについて考える(その2)

投資スタンス
固定資産

「投下資本」の視点により、B/Sで運転資本の次に見ているのが固定資産です。

固定資産で特にチェックしているのは、「何を保有していて、何を保有していないか」 です。

製造業のケース

製造業であれば、どこにどんな工場・設備があって、何を作っているのか。

外注に出しているのはどんな工程か。

さらにはファブレスか否か(設計や営業の部分で稼いでいるのか)。

こういったことから、その企業独自の門外不出の技術・ノウハウが見えたり、付加価値がどの活動から生まれているのかを類推できたりします。

SHOEIのように、国内のモノづくり(自社一貫生産による厳格な品質管理、ブラックボックス化、クラフトマンシップの継承等の理由により)にこだわっている企業は応援したくなりますね。

小売業・サービス業のケース

小売業・サービス業であれば、店舗は自前か賃貸か、賃貸であれば居抜きにあえてこだわっていたりするのか。

フランチャイズシステムを導入しているか。

物流施設を保有しているか否か。

こういったことから、その企業のコストに対するこだわり出店スピードに対する考え方、そして製造業のケース同様、付加価値がどの活動から生まれているのかなどが見えてきます。


【自前主義の例】ニトリ

①ロードサイド店舗も大部分は土地購入から始め、賃料変動リスクを抑えていること
②物流施設・オペレーションも自前で行い、絶えざる改善を続けていること
から、連続増収増益を当然のようにこなせられるだけの、コストコントロールへの徹底的なこだわりが感じられます。


【フランチャイズシステムの活用例】カーブス

①本部は出店や店舗オペレーションの戦略立案、人材育成、および会員への物販等に特化
②各店舗の出店、日々の運営、トレーナー採用等はFC企業に任せる
といった形での役割分担をすることで、本部が軽いアセットで極めて高い価値創造を行いつつ、迅速な全国展開が可能となりました。

固定資産は少なければいい、ということでもない。

このように、固定資産に関しては付加価値の源泉をどこに置くかによって、保有する・保有しないの選択が変わってきます。

少なければ少ないほどいい、という単純なものではなく、投資家としては、それぞれの資産を「なぜ保有しているのか」「なぜ保有していないのか」といったところまで思考を巡らせた上で、資本効率の優劣を見ていく必要があります。


「投下資本」としてのB/S、特に固定資産の在り方を見ていると、全体の事業活動の中で、どのような取捨選択をして資本効率の最適化に努めているのかを意識するようになります。

ビジネスモデルへの理解が格段に深まり、楽しくなってくること請け合いです。

(余剰)現預金

最後に余剰現預金についても触れておきます。

素晴らしい企業は現預金が加速度的に蓄積されていくため、「その現預金をどう活用しようとしているのか」をチェックしておく必要があります。

「M&Aや大型設備投資に迅速に対応できるようにするため」といった目的があることが望ましいので、現預金の水準が積み上がっていく傾向のある企業については、今後の具体的な使途(M&Aなら、どういう系統の企業を買収しようと考えているのか)を確認しておくと良いと思います。

そこが見えないと、投資先に「複利の経営」をしてもらえるのかどうか不安になってきますよね。

変に貯めこむよりは、ジャパンエレベーターサービスみたいに、お金がある分だけガンガン同業の買収を進めてくれたりする方がありがたいです。

投資有価証券や賃貸不動産などに余剰資金が回っているケースもよくありますので、そこも含めて最終的な使途はどうするつもりなのかを確認しておくと、なお良いでしょう。

特に決まってないのであれば・・・・・・・・・・・・・、株主還元もある程度考慮して欲しいところです。

まとめ

C/F、B/Sの順で見てきました。

この2つからは意外といろいろな示唆が得られる一方で、P/Lは誰もが見ているため、ある意味「一番面白味がない」とも言えます。

ということで、P/Lについては省略です(笑)


以上、財務三表の優先順位を変えてみると、より深みのある、握力にもつながる分析ができるのではないかというお話でした。

(終わり)

上記のように、B/Sにビジネスモデルへのこだわりが表れる業種が好みです。IT関連は「堀」が感じられないと敬遠しがち。。
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