日本証券アナリスト協会編。
投資家と企業の対話の「ものさし」とされる資本コストについて、「理論(サイエンス)」と「現実(アート)」をどう融合させるかをテーマとしております。
経済産業省より「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~」(この中のエグゼクティブ・サマリーは一読推奨です)が7月末に策定されたばかりで、その中でも「資本コスト」がクローズアップされているので非常にタイムリーですね。
https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200731003/20200731003.html
この手の本としてユニークなのは、企業と投資家との建設的対話のケーススタディに紙幅が割かれていることです。
特に奥野一成さんの書かれた「第4章 長期投資家にとっての資本コスト 対話の中での資本コストの活用」は、大変読み応えがあります。
対話事例として丸井グループ、味の素が掲載されているのですが、NVICの企業との対話が臨場感をもって再現されています。
他の企業、事業をも同じテーブルに乗せつつ、事業の経済性に関する気付きを共有していく場は、企業にとっても大変貴重であることが伝わってきます。
私もアンダーライン引きまくりで、こういう話を横で聞くことができたらどんなに身になるだろうと思いました。
議論の場に参加できる企業の方が羨ましいですね。
経営者も長期投資家も、立場は違えど事業の経済性という同じ切り口でキャピタルアロケーションを行っているのですから、事業ごとの方向性について議論する触媒として「資本コスト」が有効に機能するのは、ある意味当然なのだと理解しました。
同時に、素晴らしい経済性を持つ事業に関する知見を蓄積していくためにも、私ももっと色々な企業を見ていかないといけないなと思わされました。
この章だけでもお釣りがくる本です。
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