知財戦略の専門家であり、投資アナリストへの助言も行っている楠浦さんの、「知財×投資(長期投資)」をテーマにした新刊です。
IR部門へのヒアリングだけでは得られない「客観性」「透明性」のある情報源の一つとして、特許情報は有用ではないかということですね。
実際、私もそう思います。
企業のキャッシュフロー(CF)の観点から考えてみますと、長期的な投資CFの動向を端緒に、設備投資や資本提携・企業買収の戦略を読み解くことはある程度可能です。
しかしながら、研究開発については営業CFの中に隠れてしまっています。
ここで思い至るのは、長期投資の肝は企業自身による複利成長であり、利益をキャッシュのままにせず再投資すること、すなわち「拡大再生産」にあるということです。
それを外部成長ではなく内部成長、企業自身のイノベーションによって成し遂げようとするのであれば、当然、投資家側としてもそれを評価する術が必要となります。
そのための安定的な基盤はあるのかどうか。
そこで特許情報の出番となるわけですね。
特許「群」を分析することで、以下のようなことが分かります。
- その企業がどういう課題を解決しうる技術を持っていて、それぞれの技術がどの製品やサービスに結びついているか
- その企業の「本気度」は、どの分野に集中的・継続的に表れているのか
- イノベーションを生み出す組織能力を有しているのか(←「人」の観点からの分析により)
この本では、そんな特許「群」の見方、活用のしかたを惜しみなく提供いただいております。
長期投資と「未来」につながる土壌としての知財、確かに相性は抜群だなと実感いたしました。
金融業界アナリストやファンドマネージャーとの対談内容も素晴らしく、企業とのコミュニケーションの充実という面でも、個人的に得るものが多かったです。
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