ここまでが長い前振りでした。
やはり実際に体験してみないと分からないこともありますので。
それでは、目下delyの成長ドライバーとなっている「レシチャレ」の評価に入ります。
レシチャレのスキーム
事業計画及び成長可能性に関する事項のP.21~24を見ていただくと、サービスの概要とビジネスモデルをご理解いただけるかと思います。
ユーザー(消費者)はお得なお買い物体験をするために、「レシチャレ対象商品を探す」→「店頭での商品購入」→「レシートをアップロード」→「コイン獲得」という手順を踏むことになります。

一方、企業側から見たこのサービスの特長は、何と言っても「成果報酬モデル」であることですね。
POSレジを通過した後、(レシート撮影によるアップロード・審査を通じて)消費者に報酬が還元される形ですので、「店頭売価の維持」も可能になります。
したがって販促費の絞り込みも可能となりますし、投下した費用に対する「高い売上効果」も期待できます。
またdelyがあらかじめ用意しているプラットフォームを使いますので、「短期間で実施可能」という点も企業側からするとありがたいですね。
レシチャレのデメリット
メーカー・小売・消費者いずれもがメリットを享受できる、まさに「三方よし」で、いいことづくめのように思えるレシチャレ。
しかし私が感じた一つの問題は、撮影によるアップロードが必要であり、その審査を要し、コインを貯めて資金化するまでにはタイムラグも発生するなど、消費者に負担を強いる点にあります。
ゲーム的にチャレンジする分には楽しくていいのですが、この一連の手順を大多数の消費者がはたして素直に取り組むのかというと、そこには疑問を感じます。
やはりポイ「活」の一環であることには違いなく、能動的に取り組む消費者の数には限度があるのではないか、ということですね。
紙レシートのAIによる文字認識の能力が高まったために実現可能となったサービスではありますが、そもそも「一度紙レシートに文字として吐きだしたデータを、改めてカメラで読み取る」というプロセス自体には無駄を感じてしまいます。
それは「レシート内の個々の商品の購買情報を、小売側では認識できない」という大きな課題を解決できていないことに根本の原因があるのであって、レシチャレもそこが解決されるまでの過渡的なサービスなのかなという印象を持ちました。
とはいえ、紙レシートがなかなか減っていかない現状においては、最適解の一つとも言えそうな、良く練られたサービスだと思いますし、レシチャレ及びdelyも、少なくともここ数年でそれなりのところまで成長するイメージはありますので、短中期の投資対象としては十分検討に値すると考えています。
オフライン販促の将来
非効率極まりなく膨大な改善余地が残されているのが、実店舗を舞台としたオフライン販促の市場です。
そこをdelyも変えていこうと、目下注力しているわけですね。
ただ、この手の紙レシート撮影を使ったサービスは、長期的な帰結としてはオフライン販促の本命とはならないだろうというのが、私の使用体験から得た印象です。
では長期スパンで見た場合に本命となりそうなのは、どのような形でしょうか?
私は、スマホアプリを活用した以下のようなスムーズな購買体験ができる未来を思い描いています。
- 紙のレシートが不要となり、かつ購買履歴がスマホアプリを通してレシート単位ではなく「商品単位で」蓄積されていき、あとで買い置きした商品の在庫確認もできる。
- 商品単位の購買履歴から割り出される個人の嗜好や健康志向情報等に基づいた、適切なレコメンドがなされる。
(⇒ マスに訴えるチラシからのシフト) - 同様に、個人ごとに最適化されたクーポンが配布され、効率的に活用される。
(⇒ 販促費の無駄打ちの撲滅へ)
要するに、「オフラインでのお買い物体験も、Amazon・楽天他のオンラインでの購買体験と同様のものになる」という未来ですね。
オフラインとオンラインとの利便性における違いがなくなっていくということです。
これが実現するとしても相当な時間はかかるでしょうが、消費者側の利便性や企業側の効率性の観点から考えれば、いずれはこのような形に落ち着くと考えるのが自然のように思えます。
事業推進戦略の変遷をよく見ていかないと分かりづらいですが、この未来に向かって着々と布石を打っているのが、現在のeBASEだと認識しています。
(なお株価については、流石に現段階ではそこまで織り込めないでしょう…)
やはり私は、社会全体の生産性向上に貢献できる企業が好きなようです。
今回の体験を経て、「この未来に賭けてみたい」という思いがより強くなりました。
(終わり)



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