eBASE株主総会2025(4)個人投資家向け説明会編その2(★★★★★)

株主総会・説明会

説明会の後半は、数字に関するお話が中心です。

以下、窪田CFOによる多岐にわたるご説明の内容を箇条書きで記しておきます。

決算分析の勘所と個人投資家へのメッセージ

(↑タイトルは私が勝手に付けました)

  • 事業別の収益性について。
    eBASE事業単独で見れば、営業利益率は約50%で、連結で見ると売上高は半分ながら利益は約8割を占める。
    今後はその割合を9割、最終的にはeBASE-PLUS事業を飲み込むような方向に持って行くことを考えている。

    (→ 連結に占める高収益性のeBASE事業の割合が高まっていくことで、投資家からはあまり意識されていないような気もしますが、利益率も必然的に年々上昇していくことになろうかと思います。)

  • eBASE事業の業績の簡単な見方及び当社の哲学について。
    「売上高ー人件費=経常利益」という構造を知っておいていただきたい。
    そして1人当たりの生産性を上げることを意識している。

  • 我々の哲学であり人材にも求めるのが「量<<質」
    レバレッジが効くようなソフトウェアやサービスを出していこうというのが基本的な考え方。

  • eBASE事業の人材に対しては相応のインセンティブで報いていく必要があるが、昇給率は経団連の数字を上回っており、ストックオプション的なものも含めて、世の中の求めるところには達しているという認識。

  • 売上構造について。
    5年平均で ストック45% vs フロー55% 。
    小さく入って、百種類くらいのオプションを使いながら、既存のお客様にアップセル/クロスセルで毎年毎年追加で買っていただく分を含めると、5年平均で「リカーリング」としては78%、「完全新規」が22%という構成になる。
    つまり、実際には年度の初めに8割近くが見えてい、完全新規の2割をどうやって取っていくかが(年度ごとの)大きなチャレンジになる

    (→ ここは大変重要なポイントかと思います。突発的な経済危機でも起こらない限り、通期予想の精度はそれなりに高いということですね。)

  • 業界別の状況について。
    食品業界が全体の約5割、それ以外の一般商材は複数の業界を足しているポートフォリオであって、「日雑業界」というものは無い。
    食品業界は長くやっていてデファクトが進んでおり、非常にレバレッジが効く
    2025/3期も実は食品業界は最大の業界であるにもかかわらず、+20%成長している
    そしてパッケージ化が進んでおり手間がかからないので、利益率も高い

  • 一般商材は苦労しながら、ホームセンター、ドラッグストア、家電量販といった、新しい業界に入っている。
    この時には新規攻略なのでカスタマイズが必要となり、既存のシステムとの繋ぎ込みが要るので、「カスタマイズが増えている」というのは、業界大手の会社を今攻略しているというシグナルと見ていただいていい。

    (→ 今攻略中の業界も、食品業界同様、業界大手との取り組みで得た知見の横展開が進み、レバレッジが効き利益率が高まる局面がいずれ訪れる、と読みとることができます。)

  • 四半期開示について。
    四半期ごとに一喜一憂される方が多いが、例えば1Qの利益進捗は1/10にも満たない。
    競馬で言えば、第四コーナーから一気に来る特性があるので、1Q・2Qでガッカリすることのないように。
    なぜ業績に季節性があるかと言うと、IT投資は予算化されていて、今年度取り組んでいるものは、前年度までに予算化されているものを消化している、と見ていただければと思う。
    1Q・2Q・3Qというのはその進捗に過ぎず、旧工事進行基準で計上していく
    例えば、1Qは要件定義で10%、2Qは外部設計で10~20%、3Qは開発・実装で20~30%といった具合に、3Qを過ぎた段階ではその案件の50%くらいしか売上計上できていなくて、4Qに一気に構築・テスト・運用・検収までいって2月・3月で100%に達する、といった具合。
    進捗管理・プロジェクト管理が非常に大事なビジネスであり、コロナ禍では6月の段階で翌年1~3月の状態が見通せず、「まん防」でブレーキがかかった。

    (→ 競走馬のタイプで言えば、追い込み馬ということでしょうか。この期中の経過がなかなか投資家の間では浸透していないのが、四半期決算発表直後の株価変動にまだ表れていると思います。)

  • 今後のターゲット市場・TAMの広がりについて。
    業界があって、その中には業態(小売、商社・卸、原材料メーカー、生産団体)があり、その二つの軸からこれを「面」として捉えることができる。
    0th・1stはあくまでBtoBであり、生産性改善・合理化を目指すビジネスモデル

  • 今力を入れている2ndはB2B2Cであって、これは全く予算の出所が違う
    情報システム部門からお金をいただくのではなく、マーケティング部門、デジタル部門、店舗部門の予算からいただくことになる。
    この軸を新たに立てて「立体」として捉えると、我々が取れているのはまだまだごくわずかということがお分かりいただけるかと思う。

  • 業界単位で実績を積んでいく一方、メーカーにはPDMeBASE、流通小売にはMDMeBASEといったような、その業界特有のものではない横断型のものも提供する。
    また、商業印刷物の中で、紙チラシの10%くらいはおそらく無くなっていきデジタルに置き換わっていくだろうという見方をしている。
    よって我々が直接アプローチできる市場は×××(金額は伏せさせていただきます)くらいではないかと思っていて、今日現在の売上高ではたかだか28億円しか取れていないため、まだまだ我々は成長できると思っている。

  • 「資本コストや株価を意識した経営」について。
    PBRはまずまずの水準だが、ROEの5期平均はコロナ禍を経て低下している。
    我々はROEを2027/3期には20%を超えることを目標としている
    なお単体(eBASE事業)では2024年に20%を既に達成しているが、eBASE-PLUS事業の10%程度のROEが足を引っ張り、薄まっている状況。
    「規模」としてはプライム市場のワースト100に入るかもしれないが、上場企業の中でROEは上位15%以内、ROAは上位4%に位置する

    (→ せっかくのeBASE事業単独の高い資本効率性が、eBASE-PLUS事業の存在によって薄まってしまっているわけですが、それでもなかなかの数字です。)

  • 貯まったキャッシュの還元について。
    一番大きいのは配当性向で、直近では50%としており、かつ期初のガイダンスと実際に出た数字との高い方をお支払いする形としている。
    長期で見ていただくと、継続的に、配当金を下げない方向に行かせていただきたいと考えている。

    (→ 明言はされておりませんでしたが、「累進配当」に近いニュアンスでしょうか?)

  • IR活動について。
    株主総会を緩くしたり、プレゼンの掛け合いをしたりということで、少しずつ皆さんに伝わるようにしていきたいと思っている。
    昨年は、個人投資家の集まりのところに実際に出掛けてお話をしたり(私も参加させていただきました)、一番大きいのは年末につばめ投資顧問さんのYouTube『eBASE 「経済の堀」のつくり方』に会長・社長が出演し、特に1st eBASEでなぜ、どうやって二十数万のユーザーを囲い込むことができたのかという裏話をお伝えしている。
    こういったのもどんどん使いながら、個人投資家さんにはアプローチしたいと思っている。
    (ここで動画へ飛ぶQRコードをスクリーンで紹介)

    (→ フラットな空気づくりは意識してやっていらっしゃったということですね。動画のご紹介もありがとうございました。)

質疑応答

【質問1】

  1. 当社はシーズを形成するのは非常に上手だと思うし、デモを拝見してもこだわりのある企画が多いと感じた。一方、toCのニーズの顕在化のところのプロセスがよく見えない。例えば主婦の方にとって、チラシからレシピへの連動やUIを含めて、これが実用上、あり得る仕組みなのかどうか等、どのように検証を行っているのか?

  2. 株価について。PBRは一定の評価がなされている旨のご説明があったが、PERの評価としてはどれくらいが妥当と考えているのか?

  3. 四半期の偏重によって株価のボラが高まるようなお話があった。決算説明資料で予算比の進捗を表記するなど改善していることは分かるが、説明資料の中では今日説明のあったような四半期ごとの特性についてうたわれることによって、ボラを抑えることができ、資本コストの抑制にもつながると思うので、より一層工夫していただけるとありがたい。

2⇒
(窪田CFO)
先に数字の話から。
PERは市場の評価として真摯に受け止める。
ただ我々自身の考えとしては、「PER」というより「業績」をもっと伸ばせるのではないかと。
結果的に業績を倍にすれば(株価がこのままだと)PERは半分に下がるが、「そんなはずはないだろう」と我々は考えている。
PERを意識するよりも、業績を数年で倍にするといった取り組みこそが、会社ができる自己努力と思っている。

1⇒
(岩田社長)
2nd eBASEのUIに関してだが、我々の考えで作り込んでいく中、それに対するUIの評価については我々は適任者ではないと思っている。
社員や社員の家族に見てもらって改善の提案を受け、より消費者にマッチした、受け入れやすいUIに変えていっている。
今日見ていただいたものも、ビジネスソフトのような初期バージョンからはだいぶ改善している。

(窪田CFO)
我々はtoCの事業はやっておらず、あくまでBtoBなので、小売のマーケティングをしたり、チラシやPOPを作ったり、店舗システムを使っている担当者の心を打たなければならない
我々が出すのは基本的に(動く)「ショーケース」で、「こんなものがあるんですけど」って出してみて、どこに引っ掛かるかを見極める。
そして先方の小売さんはCの気持ちが分かるので、全部教えてもらうといったことをやっている。

まず初めにソリューションとしてあるべき形として提示していたのが、やり方として外れていた。
俺は販促で何年もやってて、チラシでこんだけ集客したんや、チラシにクーポン付けたらこんだけ入ってくるんや、という人に向かって、これからはCXですよ、DXですよって持ち込んだら、絶対に好かれない。
だからやり方を変えて、あなたのやっているアナログのメディアの延長線上にDXがあるんですよと説明したら非常にウケが良くなり、見せ方について流行りのこと、インスタのこと、色々なことを全部教えてもらっている。

これはB2B2CというよりBtoBの形。
全てのものを、仕事をされている方のヒアリングを受けてパッケージ化する、改善する。
皆様の目に触れる頃には、BtoCをやっている担当者の方に鍛えてもらっているはずなので、きっと良くなっていると信じて進めている。

我々はBtoCの心をそこまで読むことはできないが汎用的にはやっているし、個人投資家の方々にも使っていただいて厳しい意見をいただくことによって良くなっていくとは思う。
基本的に一番大事なお金を出してくれるのはBなので、マーケターの方々を集めて効率よく提案するようにしている。
一社に導入されると、数十万の会員の方に一気にアプローチができる。
我々が数十万人に個別にアプローチするよりも、どこかのポイントカードやアプリの裏側に入れば、一気に数十万のユーザーが我々のユーザーにもなる、といった形で進めている。
我々には才能もセンスもないので。

→ 動いている「ショーケース」を見せつつ、実際には小売が提供するアプリに当社が提案する機能が採用される形(裏側で当社のユーザーも増える形)を狙っているということですね。「UIは得意分野ではないので教えてもらう、鍛えていただく」という割り切りは、自分の強みを活かせる部分に特化する当社らしいと言えば当社らしいです。とはいえ、この分野においては外部との協業も考えるべき時期に来ているのかもしれませんね。

3⇒
(窪田CFO)
東証のルールもあり、我々の方で(四半期ごとの)計画的なものを出すと中身に対して厳しく問われ、決算の都度アラートを上方修正下方修正…とった感じで出さざるを得なくなる。
最近色々とご意見をいただけるようになり、決算短信だけでなくパワポのデータ(「eBASE事業の」社内計画に対してどう着地したか、のグラフのことかと思います)も出すようにしている。

ありがたいことに、今日みたいに日々IR照会でたくさんご質問をいただくようになったが、大変よく似た内容のものが複数あったりする。
他の個人投資家さんからアドバイスをいただいているが、そうしたものをFAQ的な形で質疑応答集という形で開示し、オフィシャルではない会社からの説明を、より多くの個人投資家さんにも見ていただけるようにしていこうと思っている。

(→ これはぜひ実現して欲しいですね。)

お腹いっぱいになったところで、説明会も終了です。
(会場拍手)

(15:32)

所感

今までで一番盛りだくさんの内容で、対取引先上で情報発信に制約がありながらも、自社で可能な限り現在のありのままの姿を見せていこうという工夫や努力が強く感じられた株主総会・説明会でした。

特に後半窪田CFOにご説明いただいた部分(上記の箇条書き)は、当社に投資するのであれば基本認識として持っておくべき、貴重な情報がたくさんありました。

一方、事業そのものは着実に成長はしているものの、2ndのスピード感に関しては多くの投資家の期待には追いついていないのが課題であることは否めません。
ただその中でも事業推進戦略を切り替え、IRに関してもかつての「分かる人にだけ分かってもらえばいい」(あくまで単なる私の勝手なイメージです)というスタイルから、多くの方にできるだけ実態が伝わるようにすべく意識の変化が垣間見えるなど、会社の姿勢が柔軟になってきたという印象があります。

謙虚に現状を踏まえて軌道修正を行っている姿に感銘を受け、私自身、見習いたいと思いました。

良い質疑ができたことと、今後も継続的なIRの改善が期待できそうということもあり、評価は★★★★★とさせていただきます。

(終わり)

株主総会の分と合わせて長編となりましたが、ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
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コメント

  1. まるのん より:

    一連のレポート記事を拝読させて頂きました。
    質疑のやり取りはもちろんですが、説明部分(特に第2部)の多岐に内容をとても上手に纏められていて、
    改めてその技巧に驚かされました。

    私は初参加で投じた質問も不慣れでしたが、皆さんの質疑を含めて大変学びの機会になりました。
    そして、緩い運営を含めてとても楽しい株主総会でした。

    今後2ndの展開が紆余曲折ありながらも前に進んでいかれることを期待しています。
    そのためにも適切な距離感を保ちつつ、応援していければいいなと思っています。

    大変ためになるレポートをありがとうございました!

    • 6_suke より:

      こちらこそ励みになるコメントをありがとうございました。

      長く株主をさせていただいていると、知っていることが増えていくのはもちろんですが、変化に気付くということもありますね。

      今後も株主として楽しんでいきたいと思います。

  2. ティリンジ より:

    一連の投稿を興味深く読ませていただきました。いつもありがとうございます。ホルダーとして、今はとにかく待つ時期だと再認識させられました。

    • 6_suke より:

      お読みいただき、こちらこそありがとうございます。

      私も、今は次のステージに向けた踊り場かなという印象を持っています。

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