今月は、なかなか株価上昇のきっかけをつかめないeBASEにつき、その要因と株主として取るべきスタンスに関して考察してみたいと思います。
投資におけるリスク。
私が当社に対する投資を開始した、2019年の年初時点では分からなかった投資上のリスクは、現在のところ以下の二点に尽きると認識しています。
- 経済危機があると、一時的に減益となる。
基本的には、増収増益基調で成長してきた企業です。
しかしながら、「リーマンショック」「コロナ禍」という十数年に一度レベルの経済危機があった際は、二期連続減益に見舞われました。
これはeBASE事業の収益構造によるものです。
ざっくり言うと、当社のマネタイズは
①ストックビジネス(クラウド、ライセンス&サポート)約4割
②準ストックビジネス(アップセル、クロスセル)約3~4割
③新規 約2~3割
に大別されるのですが、経済危機が起きた場合、顧客は先行き不透明な環境下で業務効率化にIT予算を振り向ける余裕が短期的に無くなり、③及び②の一部が先送りになってしまうのです。
(例えばコロナ禍だと、リモート環境を整えることに優先的にお金が回されました。)
ただ案件自体はほとんど生きていますし、①②の通り盤石な顧客基盤によるストック性と大きなアップセル・クロスセルの余地がありますので、その後は減益前の水準以上に伸びていくことになります。 - 「2nd eBASE」がいつブーストするか分からない。
コロナ禍を利用して「2nd eBASE」を推進するツールであるアプリ群(e食住なび、e食住ちらし、e食住カタログ、ビジュアルレシート)の開発を進めることができましたが、顧客側にはそれが当社(及び投資家)が期待するスピード感では受け入れられておりません。
これは、「0th」「1st」が提供する業務効率化(費用削減)と比べると、マーケティング予算を狙っていくものであるために、顧客側として費用対効果が見えづらい点が大きいです。
ただ、積水ハウスに入った「(旧)e住なび」(住宅を購入されたお客さま向けの取扱説明書一括閲覧システム)のように、業界最大手に導入されると、後を追うように案件がバタバタと(ボウリングのピンが倒れるように)決まっていく傾向はあります。
各業界の大手企業の商品データプールは既に押さえてしまっているので、一度コトが進み出したら展開は速いです。
とはいえ、肝心の「2nd」による業績のブーストがいつ起こるか分からないというのが、投資家側の悩みの種となっています。
こうしたリスクの存在が、4Qに利益が偏重する「年度ビジネス」であるという点(特に今期に関しては、表面上3Qまでの進捗が思わしくありません)と相まって、多くの投資家にとっての「忍耐」の限度を超えさせてしまう、あるいは新規購入を躊躇させる原因となってしまい、それが株価が停滞している背景にあると考えております。
長期の時間軸で見れば、「安定成長株」の資格十分であるにもかからわずです。
配当で報いる。
要するに、ガチの長期スタンスでないと、なかなか保有しづらいということです。
ただ、長期スタンスで支えてくれる株主にはきちんと報いるべく、当社からは一つのアンサーを出していただいていると、私は認識しています。
それが表現されているのが、昨年5月にリリースされた「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」です。
この中の対応方針の一つとして「継続的な株主還元の実施」が掲げられており、配当方針として以下が明示されています。
「配当性向50%を基準に算出した額と直近の配当予想額の高い方」
この後半部分から、リスクの一つ目に挙げさせていただいたような経済危機が期中に発生したとしても「最低限、期初の配当予想額は維持される」という解釈ができます。
そして、昨今の「株価を意識した経営」とビジネスモデルの盤石さからしても、これは実質的に「累進配当政策」(つまり、翌期も減配しない)表明に向けたステップではないかと私は考えています。
(聞いた限りでは、当社としても「累進配当」を少なくとも意識はしています。確実ではないものの、今は「隠れ累進配当株」である可能性があります。)
また前半部分にある基準の「配当性向50%」への引き上げにより、相応の配当利回りとなったことから、リスクの二つ目に挙げさせていただいた「いつブーストするか分からない」に対しても、「インカムゲインを膨らませていきながら、その瞬間をじっくり待つ」という選択肢が生まれることとなりました。
つまり、「配当」が二つのリスクへの対策にもなるということですね。
「増配株」としての新たな期待。
ここで配当の原資となるEPSの推移を見てみましょう。

進行期の予想数字までの年平均成長率(CAGR)を見てみますと、コロナ禍の影響で5期中2期減益であった5年で+6.9%、10年では+11.7%、一部リーマンショックの影響も含む15年では+16.9%となります。
「十数年に一度の経済危機」を前提とするなら、10年で3倍(CAGR+11.6%)~4倍(CAGR+14.9%)程度のEPS増加=配当金増加は期待してもいいのではないでしょうか。
(仮に「累進配当」がなされなかったとしても)
3/21終値の571円(予想配当利回り2.4%)からすれば、10年後は取得価額に対する配当利回りとして7.2%~9.6%程度は期待できる計算です。
以下の記事に書いた、鉱脈としての紙→デジタルへの「置き換え需要」の大きさ(この部分だけで、当社がリーチできる市場として数百億円規模あると考えています)からしても、「増配株」としての蓋然性は高いのではないかと思います。
ただし、これは現在までの延長線上でのみ考えた場合の数字であって、「2nd」は織り込んでいません。
「2nd」の本格的な展開が進めば、さらに業績の成長スピード及び増配スピードは加速していくでしょう。
ということで、
「未着火のロケットエンジン付きの増配株」
として期待できるのではないかというのが本記事の結論で、私の現在の当社に対するメインの投資ストーリーでもあります。
それを裏付ける意味でも、どこかのタイミングで正式に「累進配当政策」を打ち出していただくことを期待したいと思います。



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