質疑応答の最後です。
質疑応答(3)
【質問14】
イランなど地政学の問題で何か影響は出ているか?
需要動向の変化や原材料高といったこと等で。
⇒
弊社には元々、BCM(事業継続マネジメント)として原材料は厚めに持っておく方針がある。
戦争や災害等で物流が乱れることもあるので。
今のところはバッファで賄えている。
ただ本当にホルムズ海峡の封鎖が長引けばバッファも尽きてしまうので、今から代替品の調達先の開拓等の対策はやってはいるが、今のところはすぐに影響が出るという状況にはない。
お客様からもホルムズ海峡の件によってディスコの装置を買わなくなるといった話は無い。
一つ言えるのは、半導体は非常に付加価値の高い業界なので、言い方は良くないかもしれないが「金払いがいい」。
少ない石油製品をどこに売ろうという話になった時に、「金払いがいい」所という話になる。
ホルムズ海峡を通る原材料も使ってはいるが、それが10倍になったところで決算書には全く微々たる影響しか出ない。
だから弊社のバイヤーが10倍でもいいから送って下さいと言えば、商社もすぐ持ってくるということになる。
その原料が倍になっただけでも赤字になってしまうような業界だと厳しいが、半導体業界は付加価値が高いので、原料が上がること自体には大きな影響は無い。
全く無いとまでは言わないが、それに備えて本当に10年分の在庫を持っている。
【質問15】
私も分割は絶対に反対。(会場笑)
ただ減配だけはできるだけして欲しくないので、そこはお願いしたい。
⇒
業績を上げ続ければ減配にはならないので、そのようにしたい。
分割の関して補足すると、3人の方に分割反対と仰っていただいたが、「値がさ株ファン」という個人投資家、自分は5ケタの株を触れるんだということを矜持にしている方が一定数いらっしゃる。
そういう方は分割したからといってすぐには売らないと思うが、何かで売った時にはもう戻ってこない。
そういった方は資金を持っているから戻ってこれるので、そういう資金を持っている方がディスコファンでなくなって、仮に8万円で買えるようになって何人かに買っていただいたとしても、「値がさ株ファン」が開けた穴を全く埋められない。
だから個人投資家だけを見ても、分割というのが本当に中長期にポジティブなのかというと個人的にはちょっと疑念を持っている。
短期的にはアナウンス効果があるとしても、中長期的には「値がさ株ファン」が離れてしまったら戻ってこない。
その人達が持っている資金がすごく大きいことを考えると、値がさ株であることは個人投資家に対してもポジティブであるというロジックが成り立つ。
先ほども言ったように、機関投資家は(株式分割を)全く気にしない。
個人に関してはポジティブな意見とネガティブな意見とがあるが、「値がさ株ファン」の方は「ディスコは分割しやがったな、それなら売ってやる」などと自分で決めてしまうということがある。
「値がさ株ファン」を大事にするというのもアレだが、なるべく東証さんの要請に対しては「説明」で済ませていこうと、今のところは思っている。
→ なかなか他所では聞くことのできない、独特の価値観を持った投資家さんが一定数いらっしゃることに関してのお話でした。
【質問16】
中国向けの売上が3割ある中で、中国の内製化の動きが気になる。
先端品では負けないと思っているが、ディスコの技術的な競争優位性について、素人でもしっくり来るような説明をいただきたい。
⇒
半導体にも、成熟していてどこの国でも作れるようなものと、TSMCにしか作れないものとが段階的にある。
中国のお客様が上の方を作ろうとすると国産の装置ではダメで、ディスコの装置を使いたい、となる。
下の方については国産の装置が使われている。
価格を合わせようとすれば合わせられなくはないが、利益率が相当落ちて数字として割に合わない。
またHBMを始めとしたハイエンドがものすごく難しいので、工場の人員もそこに全力投入している。
ローエンドは貴重なリソースを使ってまで作るかというと、それはしない方がいい。
その2つの意味でローエンドはスルーしていて、現状ではそれが最適だと思っている。
ただローエンド市場とはいえ、商売をし、人を雇って学習して、能力を付けた中国の競合が将来、もうちょっと上の市場に来ることはあるが、それはそこで戦って勝っていくしかないというイメージ。
(質問者:先端のところに関しては、ディスコしか実現できないものがあるという認識で大丈夫?)
仰る通り。
先端の装置は億を超える。
それらを先端のお客様に売るとなると(合計)数億円になる。
もちろん複雑にはなるが、工程が倍かかったとしても5倍で売ればいいじゃない?という考え。
弊社が粗利、利益率がすごく良くなっているのは、市場がそちらにシフトしてきているのが大きい。
円安ももちろんあるが、高付加価値製品が増えているのが大きい。
【質問17】
社外取締役はどのような仕事をされているのか?
ニデックさんの問題は、社外取締役が仕事をしていなかったから起こったと思う。
社長と社外取締役の関係性についてお伺いしたいのと、できれば社外取締役の方から一言ずついただけたらと思う。
⇒
(関家社長)
弊社には「代表執行役評価委員会」というものがある。
報酬委員会・指名委員会・監査委員会等、多くの会社がやっているものとは全く違うもの。
年1回、社外取締役が一人一人、私の業務執行状況について成績を付け、その平均点をホームページ上で開示するという制度。
その点数が3点だと、この代表者はダメだから次を探せということになり、2点は見つかれば即解職、1点は即替えろというスコアで、6点は非常に良い。
この評価制度は私が発案して制定した。
私自身はこの会社を裏切ったり、変なことをするつもりは全くなくやっている。
私の次の人も私が人選に関与するので変な人を選ばない自信はあるが、次の次の次くらいになるとどうなるか分からない。
その時にちょっとでもおかしな代表執行役となったら解任することができるし、その制度があるからちゃんとやんないと解任になるぞという圧がその代表者にかかるので、この制度を作っている。
だから、時間が経つとこの制度も機能しないものにされてしまうことはあり得るが、ニデックさんのようにはならないと思う。
それともう一つ、うちは数値目標を作らないということがある。
数値目標を作るからそれを達成しろと言われ、各事業は達成できないとクビになるから、数字を作っちゃう。
弊社の場合は、数値目標を一切作らない。
ただ、頑張って会社の利益が増えたら、賞与が連動して上がるという仕組みを作った。
だから目標必達で頑張るのではなく、賞与を増やすための頑張りになる。
数値目標が良くないのは、達成しないと怒られるので、低めの目標を作るという力学が必ず働くこと。
また、3月が期末として1月に達成してしまうと、部長クラスが「もうやるな」と言う。
目標以上にやると来年の目標が上がってしまうから、「もうやるな」ということが本当に起きる。
これが数値目標を立てて必達を目指すことの最大の弊害。
弊社の場合は「やるな」という人が誰もいない。
弊社の利益率が良いのはその組織構造が大きい。
ニデックさんのようにはならない準備はしていると私は考えている。
50年後は分からないし、皆様もいらっしゃらず、孫に相続した株をどうするんだみたいな話にはなるのだろうが、少なくとも私が生きているうちに、引退した後に残念な姿になるのを見たくないと思いが凄く強い。
自分が引退した後も健全でいられる仕組みはしっかりできていると思う。
(監査委員長 兼 代表執行役評価委員長:時丸社外取締役)
私は金融機関出身でメーカーの監査役もやってきて、通算すると財務が10年以上、法務関係で10年以上、監査で15年ほどやってきた。
ガバナンスに関しては見える化が進んでいて、社内の色々な情報がすごくオープン。
色々な会議に出たり資料をみたりして、間違いがないことを監督するのが我々のミッションだが、非常い真面目な会社という印象で、皆さん誠実な方が多い。
私も色々な会社を見てきたが、社外取締役としてすごく安心して見ていられる会社だと感じている。
→ こういう創業者一族がトップを務める会社では特に、こうしたガバナンスのお話は貴重ですね。下手な目標を作らない点は、その理由も含めて素晴らしいと思います。
【質問18】
御社の強みについて伺いたい。
半導体の製造工程では微細化の限界が近づいており、前工程よりも後工程の重要性が増し、そうなれば御社の強みがより発揮され、株価の成長も期待できると聞いている。
これからの展望と、どうやって強みを出していくかということについて教えていただきたい。
⇒
前工程が重要でなくなるということはない。
どちらかというと、この変化が起きる前は前工程が半導体業界のキングで、後工程は奴隷みたいな位置付けだった。
それが前工程以外でも付加価値を上げられるんじゃないかということが、色々な技術の開発もあって分かってきて、後工程にも光が当たり始めたというのが実態。
決して前工程が大事じゃないといったことはなく、前工程の方が市場規模も大きくて技術者の数も圧倒的に多いし、使っている資金も多いので、それだけ人と資金を投入したら何かを生み出し続けられる。
前工程も限界だというのは20年くらい前から言われていて、言われたらブレークスルーした、また言われたらブレークスルーしたという感じで、限界説は何度も言われてきた。
証券会社もその方が儲かるから。
ネクタイと一緒で、細いのを流行らせたり、太いのを流行らせたり…今はネクタイをしなくなったから業界も大変なんだけれども…まあ、そういう所はちょっとある。
必要以上に前工程をディスって後工程が持ち上げられている面はある。
ただ、後工程も脚光を浴びるようになったのは事実で、その後工程の中でディスコのポジションというのは、自分で言うのは憚られるが、実は圧倒的で、時価総額で兆を超えるのはディスコだけ。
まあ、兆を超えるどころか8兆円くらいの評価をいただいている。
地力もあるし、デバイスメーカーの社長も後工程の社長になんか普通は絶対に会わないが、ディスコだけはどちらかと言えば向こうから会いたいと言ってこられるような構造になっている。
それだけお客様の中で、後工程でディスコは外せないよねという存在として認めていただけているということ。
元々後工程の中では比較的高い装置をやる会社だったのと、技術的なことを申し上げれば、回路の完成したウェーハの前工程ができて、それを最終的にダイシングで小さくしてパッケージにするが、そのウェーハという状態が一番価値が高い。
ウェーハ1枚で5億円ということもある。
ディスコの工程だけが、丸々1枚使う。
グラインダー、ダイサーまで。
ダイサーがダイシングするとチップになるので、1個1個の価値は分割される分だけ小さくなる。
だから、ディスコの工程が後工程の中でも責任が重い。
ディスコのグラインダーが削り過ぎてウエーハをお釈迦にしたりしたら、大損害になる。
絶対間違って切ってくれるなという、その責任がすごく重いところでやっているので、お客様はダイサー、グラインダーが競合に比べてディスコは高いんだけど一番確実なので、ディスコを選んでおこうかとなりやすい。
それを狙っていたわけではなくて、気が付いたらそこにいた、運のいいポジションにいた。
かつ全社員が全力で働く文化があるので、AIの流れも全部キャッチできたし、お客様の「ディスコに任せておけば安心」という30年・40年前から積み上げてきた信頼がある。
さらに言えば、平均年収は今、東京エレクトロンさんよりも上。
単純に考えると、東京エレクトロンさんよりもディスコに入りたい学生さんが多いということになるし、東京エレクトロンさん級のエンジニアが取れているということになる。
後工程ではそんな人材は他所では採れないので、人材的に無双状態になる。
その構造をいかに壊さないかということが大事。
→ 「後工程では無双状態」という、現在の立ち位置が非常にいいですね。巡ってきた運をつかみ取れるだけの素地があったということも見逃せません。
ここで、時間もだいぶ経過したので、最後の一問とさせていただく旨のアナウンスがありました。
【質問19】
今の株価水準は、社長から見てどんなものか?
⇒
3万円の時に「ちょっと出来過ぎだな」と、言わないが、心の中では思っていた。
でも、そこから3分割した上で8万円になっている。
プロの投資家たちがディスコの将来を見て付けている価格であり、その意味ではまだまだ将来性があると見られているということ。
うちはその売上規模に対しては株価・時価総額は高い。
もしもプロの機関投資家が将来はないなと思ったら、売上に対して時価総額が低い状態になる。
今の売上に比して時価総額が高い状態は、世界中のプロが「ディスコはまだいけるだろう」と思っているということだと理解している。
もちろん、うちが下手を打てば期待を裏切ることになるので、後はきちんとやるしかない。
なかなか社長が今の株価が高すぎるとか安すぎるとか言うと、それが独り歩きしてしまうので直接の言及は避けるが、プロの投資家・機関投資家がディスコの企業訪問に本当に来られて、1時間・2時間ミーティングをして根掘り葉掘り聞き、それでディスコの株を買ったり持ち続けたりすることを決める人達が世界中に何百人といらして、その人達のコンセンサスというか合意の結果が今の時価総額ということ。
それは将来まだまだいけると思っていただいているものと、私は考えている。
以上で質疑応答は終了。
(15:21)
議案採択を経て、佐野新任取締役の紹介(一礼)があり閉会となりました。
(15:23)
所感
ここまでの値がさ株の総会参加は初めてですが、株主の皆さんの考え方がこれまで参加してきた多くの企業のそれとは異質で、一定のステイタス感を持って総会に臨まれているのが印象的でした。
また関家社長からはのっけから圧(→ひょっとしてワンマンかも?という疑念も)を感じていたのですが、お話を伺っていくうちに、視野が広くバランス感のある素晴らしいリーダーだなというように印象が変わっていきました。
この質疑応答の内容を振り返ってみるだけで、当社の強みがよく理解できます。
文章を読み返してみると、質疑応答自体が企業分析レポートみたいな仕上がりになっており、それだけ関家社長は普段からロジカルに物事を考えていらっしゃって、またそれを噛み砕いて説明できる方なのだなと感じました。
社員の皆様が仕事に打ち込める環境もきっと整っているのだろうと想像できます。
色々な面で印象に残り、また勉強になる株主総会でした。
評価は★★★★★とさせていただきます。
(終わり)
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