東原敏昭『日立の壁』を読む。

読書

日立製作所に投資している者として、改革の歴史を知ることと東原会長のお人柄や頭の中を知ることが大事だなと思い、読みました。

東原会長は、日立の不文律から言えば非エリートのキャリアを歩んでいます。

品質保証部という、製品の稼働をフォローしつつトラブルがあれば解決にあたるといったような、各分野のエキスパートが出世しやすい同社において、傍流とも言える部署で鍛えられました。

ただ、だからこそ幅広い事業の現場を経験、さらには精通することができ、カンパニー制の弊害でサイロ化(組織や情報が孤立し、共有できていない状態)したグループに対し、説得力を持って大掛かりに再編を主導できたのですが、その辺りの経緯について生々しく描かれていました。

自律分散型グローバル経営が、ご自身の担当したJR東日本の東京圏輸送管理システム(ATOS)に着想を得ているというくだりも興味深かったです。


さて現在の日立を象徴する言葉といえば、「ルマーダ」です。

Lumada は、お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称です。


公式な定義は上記の通りなのですが、この一文だけではいったい何のことか分かりませんよね。

「一言では表現できないところがルマーダの特長」と、生みの親である東原会長ご自身が仰るこの「ルマーダ」についても、日立の歴史と紐づけて詳しく説明していただいております。

それだけでも読む価値はあると思いました。


私の場合は、説明の箇所を読んで、投資先のeBASEが顧客同士でサービスの導入事例やその効果を共有する場として設けている、「eBASEカンファレンス」との類似性を想起できたことで理解が進みました。

業界横断的な知見の共有、そして利活用は、組織の全体最適化には欠かせませんね。

特に、かつての日立のような巨大な縦割り組織においてはその効果は絶大であり、社会にインパクトをもたらすこと(「社会イノベーション」)すら可能になるのだと感銘を受けました。

日立はこの4月から新体制に変わり、次期中計もスタートします。

それに先立って過去から現在までの歩みをおさらいする意味でも、大変良い本だと思いました。

日立、2025年4月からの新たな事業体制を明らかに 德永社長直下に戦略SIB BUを新設

「昔話」ではなく、改革が現在進行形なのが良いですね。
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