この本のテーマは、ズバリ「失敗からいかに学ぶか」ということです。
失敗の構造を解き明かす、さまざまな業界・組織・人物を横断する事例集にもなっています。
各事例では、当事者それぞれの立場からの(時には一刻を争う)状況判断の様子が克明に描かれており、小説のような面白さがありました。
その中で、「失敗から学習できない組織」として医療業界を、「失敗から学習する組織」として航空業界を、第一章で象徴的に取り上げています。
前者は完璧主義であり、失敗は良くないこと、恥ずかしいことととらえ(「調査嫌い」)、隠蔽に走ろうとします。
失敗や欠陥につながる情報が放置されたり曲解されたりして、その経験が次に活かされません。
後者は対照的に、失敗をシステムを改善するための学びの機会と捉えます。
飛行機に搭載されているブラックボックスで、事故原因を詳細に知ることができます。
パイロットは正直に、オープンな姿勢で自分のミスと向き合います。
事故調査のために強い権限を持つ独立の調査機関があり、失敗は特定のパイロットを非難するきっかけにはならず、すべての航空会社・監督機関にとって貴重な学習機会としています。
投資先企業を選定する際、どちらの企業がいいでしょうか。
経営者を筆頭として、物事が良くない方向に進んでいる際に、認知的不協和の解消や組織防衛に走ってしまう企業。
挑戦を促し、小さな試行錯誤を繰り返していく組織文化がある企業。
答えは言うまでもありませんが、エクセレントカンパニーを選好する場合は前者を選定してしまうリスクがあることに注意が必要です。
企業に求められるのは、「信念を貫く勇気」(トップダウン方式)と「進んで自分を試して成長し続けようとする謙虚さ」(ボトムアップ方式)の両方です。
頭を使って考えた仮説を検証しつつ、実践で失敗や選択を繰り返して学びながら、戦略の方向性を見極める。
こうしたことができる企業こそが成長できる、だからこそ組織文化を知ることが大事であると、この本から学ぶことができます(「失敗が多いからこそうまくいく」)。
個人の投資に関しても、多くの気付きが得られるかと思います。
私がブログに月々の取引や分析を記録し続けているのは、事後的にさまざまな選択について客観的に振り返ることのできる「ブラックボックス」を欲しているからでもあるとも言えます。
私は投資においてストーリーを重視しておりますが、その中で物事を良い方に捉えようとするバイアスがある(→ 間違った仮説に執着してしまうリスクがある)と自覚しているので、その時々で記録しておくことの重要性をこの本で改めて実感致しました。
失敗の受け止め方とその活かし方によって、人生の可能性をいくらでも広げられると感じさせてくれる好著です。
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