味の素株主総会2026(3)(★★★★☆)

株主総会・説明会

質疑応答の続きです。
ようやく私にも質問の機会をいただくことができました。

質疑応答(3)

【質問7】
有価証券報告書の監査報告書の中で、監査上の主要な検討報告書が2件掲載されている。
ただいずれも前期に記載されている内容から特段大きな変更は生じていないものと理解している。

一方ではAIデータセンター向け半導体の需要拡大、新たな地政学リスク、為替・原材料の変動等、取り巻く事業環境には一定の変化があると考える。

まず会計監査人にお伺いしたい。
当期の監査上の主要な検討事項を選定するにあたり、前期からの事業環境の変化をどのように評価し、今回追加または変更を不要と判断されたのか、前期と同一の内容となっている理由につき、可能な範囲でご説明いただきたい。
また、監査委員会にもこの件について率直なご見解をお聞かせいただきたい。
会計監査人からの直接のご回答が難しい場合には、監査委員会からのご回答のみで構わない。


(監査委員会:引藤独立社外取締役)
今ご質問の件は、Key Audit Matterという、監査上気を付けて見る場所のことだという認識。
ご指摘の通り、外部環境は大変変わってきている。
先ほど社長からご説明いただいた通り、2025年度の業績は非常に好調に推移した。
今仰ったような外部環境の変化により事業が大きなインパクトを受けた場合には、もちろん候補として挙がってくる可能性はあるが、実際には経営陣の絶え間ない努力で業績もきちんと達成できている。
もちろんそうしたことも全部検討しながら、何が一番、味の素の監査において必要なものなのか、私ども監査人と候補を選んでから8ヶ月くらい、本当にこれでいいのかと話し合いつつ、最後に絞り込んで重要なものを載せる項目であり、現在有報記載の通りとなっている。
申し上げたかったのは、記載はこうなっているものの、先ほど仰った内容についてはきちんと私共も理解し検討しながら、最終的に記載事項を決めているということである。

(中村社長)
監査委員会とは、私も含めて経営トップ層とも定期的に意見交換を行っており、地政学リスクを含めた環境の変化には十分注意して進めている。

【質問8】
Well-beingについて。
「志」にも「Well-beingに貢献する」とあるが、先ほどからの説明でもあまり触れているように見えなかった。
数値化や成果の検証などは難しいとはいえ、それを「志」に掲げている以上、一般の消費者に伝える努力は必要で、それが少ないのではと思う。
もちろん商品を通じて、結果的にWell-beingを目指しているのであれば、今のやり方でもいいかとは思うが、やはり「志」を消費者が理解した上で当社商品を買い、Well-beingになりたいと思っていただけるような施策があまり感じられなかった。
直接話していく、双方向で伝えることで本当に伝わっていくと考える。
どう消費者に伝えていくかについて、考えをお聞かせ願いたい。


ご指摘の通り当社は「アミノサイエンス®で 人・社会・地球のWell-beingに貢献する」という志を掲げており、コーポレートスローガンはEat Well, Live Well.」としている。
Well-beingの定義は色々あるが、基本的には心も身体的にも健やかな状態と捉えている。
それを実現するための事業活動を行っている。

本日説明をさせていただいたものでそれが感じられなかったということであれば、私共の説明のしかたに改善をすべきと思うが、例えば本日説明申し上げたヘルスケアの分野で遺伝子治療というのは、希少疾患の遺伝子の疾患で困っている方の健康寿命を延伸する、Well-beingに貢献する大事な仕事である。
ICTの部分では、人々が快適に通信できてコミュニケーションができるという、ITの部分のWell-beingもある。
しっかりと持続可能なアグリフードシステムに応えていく、地球と一つという、社会のWell-beingもある。
「あえて、」という冷凍宅配弁当で、おいしい、ちゃんとしたものをしっかり食べるというコンセプトの下、1日の1/3の野菜、食物繊維、そして食塩の減塩をして、しっかりおいしいお弁当を届けることで、栄養価値を届けるWell-beingに貢献している。
病院から退院されて摂食不良の皆様に、食べやすい献立とリアルな製品をお届けする、それも全ての方においしい食べ物をとっていただくというWell-beingに貢献していると考える。

見せ方が悪かったのかもしれないが、全ての事業がWell-beingにつながっていると考えている

【質問9】
AI関係の投資判断に関して。
今回参加するにあたり取締役候補10名の経歴を調べると、半導体関係で事業経験をされている方が中村社長お一人で、他は社外取締役にアナリスト経験がある方がいる程度。
工場建設を早める等の判断は結構大きなものと思うが、そこは社外取締役とかが補強して判断していくのかと思っていたところ、そこに動きが無かったのが気になっている。
執行役のほうに非常に長けた方がいるのでそこで担保しているだとか、経営判断をする際にどういった体制を整えているのかが知りたい。


我々は指名委員会の設置会社であり、取締役の監督と執行は明確に分離している。
取締役の役割は3つあり、①大きな方向性を示す ②執行のリスクを支える ③執行を適切に監督する というもの。
AIの投資を早めるといった判断は、基本的には執行側が行う。

執行側には私も入っているし、味の素ファインテクノ社の社長もしっかりと意見が言える状態で、バイオファイン事業本部長も意見を言う形でしっかりと揉み、それを取締役会で審議していく体制となっているので、十分なスキルを有する皆さんと議論を深めて事業価値向上・グループの継続的成長に資する形で進めている。

【質問10】(女性)
先日、日本経済新聞で味の素の本社が2月に売却済と知ったが、京橋にある本社が売却されたということ?
売却後はどちらの方に賃貸などで移るのかが、井戸端会議でも話題になっているので、そのお話を伺いたい。


当社は京橋本社ビルと土地を譲渡したが、譲渡金額は451億円。
簿価が45億円なので406億円の売却益が出た。
これも先人の皆様のお陰と感謝しているところだが、同じ京橋の道路を挟んだ戸田ビルディングというビルがあり、そこの最上部、23~27階の5フロアを借りた、レンタルのオフィスとなる。
14階の建物と別れていた建物が、5つのフロア、ほぼ4つのフロアに集約されるので、しっかりと共創のできるコミュニケーションを生み、新しいイノベーションにつなげていきたい。
戸田ビルディングのほうに、6月末から引越しをする。

【質問11】
ABFの値上げに関して。
Palliser Capitalからの3月の提案内容については私も確認させていただいているが、当社として+30%の値上げ等には応じない方針であると理解している。
その理由として、半導体開発のバリューチェーンにおいて既存の共創エコシステムを大切にしたいということが一つあると思う。
また極端な値上げをした場合、例えば他社のフィルム素材を使うとか、(ABFが使われない)ガラス基板をパッケージングに使うインセンティブを高めてしまうということがあり、それらを危惧してそのような判断になっていると想像する。

こうした「代替品の脅威」について、会社としてどのように捉え、またそれに対してどのような打ち手を考えて実行していくのかをお聞かせ願いたい。

(私からの質問です)

(最初からずっと挙手していたのですが、ようやく順番が来ました。)

最初に、値上げの話についてはご理解の通り。
ABFは1999年から大手半導体メーカー様に採用されて、その後応用展開をしてきた。
当初から、半導体パッケージを作る直接のお客様、そしてエンドの半導体メーカー様と密にコミュニケーションをとりながら、ほぼ共同開発のような形で材料の開発のすり合わせを行っている。
それが故に、2年ごとに半導体がアップグレードされる都度、材料にもアップグレード、性能向上が求められる。
求められる性能とともに、どういう価格帯の材料であればそれを達成できるのかという、性能と価格をすり合わせながら開発を行っていくものであり、採用になってから一律値上げをするようなビジネスモデルではない
当然、中東情勢等で原燃料価格が吸収できないほどに上昇した場合には、お客様に説明をし適切に価格転嫁をさせていただくというスタンスは不変。

競合品に関しては、1999年の採用以来、2年ごとに「材料オリンピック」がある
ずっと戦ってきている。
我々はその開発スタイルを「高速開発システム」と呼んでいる。
2年ごとに材料がアップグレードを要求される、その要求性能を先読みし、実際にニーズが来た時にすぐに複数のコンセプトでお示しする。
その評価をいただきながらも、改良の予測をし、複数のサンプルを用意し、ずっとお客様のニーズを先読みし、定期的にフィードバックを得て改善し、それを採用まで続けるということを行ってきた。
ガラスコア等、他の次の技術に関しても常にウォッチし、我々の材料のリスクと機会を共に考えていきながら開発を進めている。
将来の光電融合においても、光導波路系の絶縁体の開発を行い、国内サンプル出荷を行っている。

今後も「高速開発システム」が我々の強み。
直接エンドのお客様とのコミュニケーションを密にし、しっかりと次の世代の採用を勝ち取り、事業を拡大していく。

→ 中村社長に気持ち良くお話しいただけるような質問を考えておりました。ご回答によって安易な値上げに応じない理由が良く分かりました。「材料オリンピック」 のお話を伺うことができたのも、個人的には収穫でした。

【質問12】
セグメントに関して。
ヘルスケア等の事業利益の伸びが非常にインパクトがあるが、ここにヘルスケアと電子材料という2種類の事業が入っており分かりづらい。
将来的にどのように伸びていくのか教えていただきたい。


当社は決算発表資料をホームページにも掲載しているが、「セグメント別業績予想」というものを発表させてもらっている。
ヘルスケア等は、まずご指摘いただいた電子材料については「ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)」として開示をさせていただいている。
例えばFY25の事業利益は546億円として開示している。
もう一つは「バイオファーマサービス&イングリディエンツ」として、CDMOの事業と医薬用・食品用のアミノ酸の事業をセグメントとして開示させていただいている。
「その他」は、化粧品、スポーツ用、飼料用サプリ等。

私共としてはファンクショナルマテリアルズを中心とした電子材料とバイオファーマサービスで飛躍的な成長を続けていく。
食品事業のステーブルな成長とヘルスケア等の飛躍的な成長で、2030年には事業利益で食品とヘルスケア等で1:1になるような「2030ロードマップ」を描いて事業の拡大を進めている。
セグメントベース予想も行っているので、併せてご覧いただきたい。

【質問13】
先ほどABFの値上げには慎重というお話があったが、新しく出す製品について利益率が高まっていく、利幅が伸びるとか、逆に作るのが難しくなって利益率が下がるとか、その辺りの展望についてお聞かせ願いたい。


ABFは先ほども申し上げた通り、個々のお客様と協働ですり合わせしながら、性能と価格を納得いただいて納入することになる。
開発品はその性能を出すために材料が元々高級ということもあるが、基本的には新しい開発品は高い機能を発揮するので価格は上がっていく
AIアプリケーションに使われるのは最新のABFで、従来のものよりも価格も利益率も高いものだ。

ABFの事業は10年ほど前は事業利益率は30%程度だったが、最新のABFの番手の拡大によって、現在50%を超える非常に高い利益率を達成している。
今後もお客様のニーズに応えながら高付加価値製品を創出し、引き続き高い利益率の事業としていきたい。

(続く)

ABFのお話になると、中村社長もより一段と雄弁となりますね。次回が最終回です。
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