質疑応答の続きです。
質疑応答(2)
【質問6】
御社のハラスメント対策につき、法律で定められているハラスメント相談窓口での実績を踏まえてお聞かせ願いたい。
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全てのハラスメントを禁止するという、味の素のグループポリシー、AGPと呼んでいるが、まずこれをしっかりと定めている。
さらに法令遵守はもちろんのこと、社内外にハラスメントに関するホットラインを設けており、世界中のグループ会社はそのホットラインを通して、ハラスメントを含めた社内からの外部への通報を受け付けるという仕組みがある。
さらに職場ではAGPを考える会というものを定期的に開催しており、ハラスメント行為があるかないかといった課題を話し合い、その結果を経営会議や取締役会でも審議をする仕組みがある。
非常に重いハラスメントが起こった場合には、懲罰委員会を設定し、 その該当者に対して懲戒を行うといったことを進めている。
【質問7】
「中期ASV経営 2030ロードマップ」に関して。
指数を見ると、非常に収益的には意欲的な素晴らしい計画だと思う。
一方、オーガニック成長率は低い。
食品事業の現在の売上は、想定されている食品マーケットに対してシェアはどのくらいなのか、2030年にはどのぐらいのトップラインの規模になると見られていているのかということを教えていただきたい。
食品事業はあまりシェアは伸ばさず、あとは電子材料で頑張るということなのか、その辺りについて知りたい。
⇒
(中村社長)
食品は、調味料、栄養加工食品、さらにソリューション&イングリディエンツ、冷凍食品と、カテゴリーは多岐にわたる。
それぞれの市場ごとにシェアとそこにおける弊社の価値は異なると考えている。
電子材料事業を引き続き伸ばしていくことはもちろんだが、食品事業も弊社のコア事業で最も大きなものでもあり、引き続きオーガニック成長を続けていく。
国内の食品事業はやはり人口縮小ということでなかなか苦戦しているが、昨今では「Cook Do」極 (プレミアム)シリーズとか、特定のお客様に刺さる新製品が出せていて、国内食品もまだまだ伸ばせる余地があると考えている。
また、インバウンドのお客様だとか、我々の外食のお客様とともに海外へ展開していくといったことでも伸ばせると考えている。
海外においては引き続きASEAN・ラ米は好調で、まだまだ新しく出せる商品もある。
また新市場として、タイ・インドネシア・フィリピン・マレーシア・ベトナム以外に、ラオス・カンボジア・ミャンマーといったところにも伸ばせる。
ラテンアメリカはブラジルとペルーがメインだが、コロンビアやチリといったところにも伸ばせる余地が残っており、食品事業もしっかりと伸ばしていきたいと考えている。
(正井執行役専務食品事業本部長)
食品事業は巨大な産業であり、我々のやっていることはその細部、例えば調味料、食品、あるいは冷凍食品、ソリューション&イングリディエンツと分けて運営しており、いくらぐらいが想定規模だと一言でお答えするのは非常に難しいというのが現状。
多少定性的にはなるが、調味料・食品に関しては地域性があり、例えば味の素が非常に強いASEAN・東南アジアやラテンアメリカでは圧倒的なシェアを持っているとお考えいただきたい。
冷凍食品については日本で育てた事業だが、アメリカに進出し大きな買収をしてから10年、構造改革に苦労したがようやく利益貢献ができるようになり、アメリカでは非常に成功して成功していると言っていいと思う。
これをヨーロッパやそしてこれからは、元々は調味料で作った東南アジアという市場、あるいはラテンアメリカという市場でも伸ばしていこうとしている。
もう一つ申し上げると、食品全体のロードマップの中では、地域戦略として地域ごとに伸ばしていく分野が分かれているというのが一つある。
それからもう一つ、オーガニック成長に関しては、これは私が非常に力を入れているだが、味の素の食品事業は非常に真面目に成長してきているものの、一つ一つの組織間の壁が結構あると思っている。
今やろうとしていることとして、組織間の壁を超えた、今までなかった融合を進めることで、オーガニック成長はまだまだできると考えている。
実は味の素の社内では、食とバイオ&ファインケミカルで、2030年には利益で1:1ということが掲げられているが、食品のメンバーは大変増えていてこれからもっと伸ばしていく、1:1ではなく食品が負けないように、それ以上にということで、一丸となって頑張っている。
会社の方針と反するようなことを今申し上げたが(会場笑)、頑張って食品はこれからオーガニック成長をやっていくことを宣言するので、どうか応援していただければと思う。
→ 食品事業の責任者としてのプライドを見た気がしました。
【質問8】
経営ビジョンがよく分からなかった。
食品には相当力を入れると仰る一方で、電子材料をやる、ヘルスケアもやる、アミノ酸ケミカルもやるとなれば、莫大な投資が必要になる。
株主の関心の一つとして、味の素が将来どういう会社になるか、レゾンデートルをどういうものにしていきたいかがあると思う。
せっかく色々な芽を持っている中で、バラバラな分野でそれぞれ大きな投資を必要とするというのでは…
こういうところを狙っていくんだという経営ビジョンをお示しいただけると分かりやすい。
⇒
弊社の経営ビジョンは「志」と、「アミノサイエンスで人・社会・地球のWell-beingに貢献する」ということだ。
アミノ酸というものをベースにした、アミノ酸の働きに徹底的にこだわった、これをアミノサイエンスと呼んでいるが、アミノ酸にはうまみの機能、栄養の機能もあり、またアミノ酸の反応するという機能を使った界面活性剤や電子材料も生まれてきている。
すべての根っこはアミノ酸の技術ということで、アミノサイエンスをベースに我々は人・社会・地球のWell-beingに、課題を解決しながら貢献していくというのが経営ビジョンとしてまずはある。
電子材料をしっかり伸ばすということで、アセット(投資)の話が出ていたが、電子材料は非常にアセットライトな事業であり、フィルムを作るところは外部に委託をしている。
一番価値を生むところが材料を設計する技術になるので、そこに注力をし、非常にアセットライトな状況。
バイオファーマサービス&イングリディエンツも独自の技術、アセットライトな技術にこだわったバイオファーのサービスということで、全ての部門をアミノ酸を根っこにしてアセットライトの方針で伸ばしていく。
弊社は食品だけではない、 他にもサイエンスがあるところがユニークネスとなっており、それも経営ビジョンだと私は考える。
→ 同じ根っこから枝分かれして発展させていけるような、技術の磨き込みとそれを促す企業文化が素晴らしいと思います。どんなに大きくなっても、根っこを大切にしているのがいいですね。
【質問9】
社長交代もあり参加させていただいた。
記憶に残る経営者とそうでない経営者とがいる。
熱意がありわかりやすいキャラクターであった藤江さんからたすきを受け、継承すること・しないことといった観点から、中村社長の抱負をお聞かせ願いたい。
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まず、このサクセッションプランは非常に緊急事態、緊急時のものであったことをお伝えする。
藤江前社長は体調を昨年末に崩され、私はブラジルから帰国をしていた中、急遽指名委員会からの聴取を受け拝命した。
ただブラジル味の素社の社長は、ここ二回連続で社長を輩出しているポジションであり、2022年にで私がブラジル味の素社の社長を拝命した時点で次のCFO候補の1人になっているということを自覚した。
藤江さんのリーダーシップを常に学ばせていただきながら、こういった株主総会のビデオも拝見し、私ならこうする、私ならどう考えるかといったことを常に自問自答してきた。
準備が万全とは言わないが、しっかり考えて、このサクセッションをさせていただいたと思っている。
藤江前社長が非常にいい文化、「志」の下地を作っていただいていていると思う。
その強い「志」と「ASV経営」を引き継ぎ、さらに藤江前社長に作っていただいた失敗を恐れず、挑戦する文化、この挑戦の質を高めていきたい。
その一つの手法が、高速開発システムを型化して展開することだと考えている。
ブラジルには無かったこの高速開発システムについて、全ての従業員と話をした。
するとブラジルのメンバーが、自分の事業、自分の工場、自分の職場で、一日でも早くという高速開発について考えてくれた。
その健全なる危機感を持った戦闘力の高い文化をさらにアップグレードして、ABFに次ぐような新しい事業をローンチしていきたいというのを一番に考えている。
→ トップに就くことを2022年から視野に入れ、研鑽を積んできたということですね。
【質問10】
この会場に入る前、檻に女性が3人、水着スタイルで入って何か主張していた。
株価が下がるようなことがあっては大変なので、なんとかして欲しい。
⇒
私自身が確認できていないのでコメントは差し控えさせていただく。
いろいろ各種団体の主張もあろうかと思うが、ご意見として承る。
株価低下のないように努力していく。
→ このパフォーマンスは例の団体のものですね。
【質問11】
各種ネットでの配信を毎回視聴しているので、ぜひ続けていただきたいと思う。
昨年の総会では藤江さんから、買収したForge社に力を入れていきたい、5年・10年は利益が出ないかもしれないがしっかりやっていきたいと、夢のあるお話をいただいた。
その後の進捗や今後どのように推進していくのか、どのように参画してシナジーを出していけるのか、その辺りの展望があればご説明いただきたい。
⇒
(前田執行役専務バイオ&ファインケミカル事業本部長)
報道されている通り、2023年にForge社の株式を100%買収し、完全子会社にしている。
買収の目的は三つ。
一つ目は、遺伝子疾患。
世界中で約3億人の、元々遺伝子に疾患があり、いま治療法が無い患者様がいらっしゃると言われていて、半数のお子さんであり、かなりの方が5歳以上生きられず、他に何の治療法もないという状況。
Forge社はこれに対していま世界で最先端の研究をしている。
二つ目は、遺伝子治療の中でも同社は非常に先端を行っていて、競争力があるということ。
三つ目は、当社との相性の部分。
我々のアミノサイエンスと非常に相性がいい上に、相互に研究を補完し合える、あるいはさらに高い品質やコストダウンができるということ。
そしてパーパスの部分で、私どものアミノサイエンスで人・地球・社会のWell-beingに貢献するということと、Forge社のどうしてもいま治らない患者様を助けたいという志が、非常にマッチしているということ。
約1年半を経過したところで、非常に順調。
顧客数は当初予定したよりも大きく増えており、現在、米国のバイオファイン業界においては創薬に対して資金が潤沢にいかないような疾病もあるが、遺伝子治療に関しては非常に期待が高いということ、困っておられる患者様が大勢いらっしゃるということ、他に治療法が無いということで非常に開発意欲も旺盛で、Forge社もその中でかなりシェアを伸ばしている。
研究に関しても、我々はかなりの研究者を派遣して交流をしているが、一緒になることで非常にいいアイデアがたくさん今出てきており、むしろリソースが限られており優先順位を付けてやっていくことが大変なくらい。
製造品質を上げる、あるいはコストを下げるという点でもかなり両者のシナジーが出るという手応えを感じており、 初動の1年半としては非常にいい形になっている。
(中村社長)
Forge社の事業は大きな社会価値を生み出すことができるし、早期にしっかりと経済価値も生み出せるように尽力していく。
質疑は以上となります。
(11:14)
この後議案の採択を経て、閉会となりました。
(11:16)
所感
中村社長の経営ビジョンやこだわっていらっしゃる部分(高速開発システムに代表されるスピード感、数字、現場での対話重視)がよく理解できた総会でした。
そして今後も、中村社長、そして脇を固める役員の皆様の下、味の素は盤石だろうという印象を強くしました。
ただぜいたくを言えば、今回のご発言の数々はあらかじめ入念に準備されていた模範解答的な内容のように感じられたため、これも慣れの問題もあるかと思いますが、もう少しだけ当意即妙のやりとりが見られるとより良かったと思います。
「質問は一人一回一問限り」という、前回から後退した部分があったことも踏まえ、株主総会そのものの評価としては★4つ寄りの★★★とさせていただきます。
(終わり)



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コメント
>「質問は一人一回一問限り」
これは確かに残念ですね。これだと質問→回答で終了になってしまって、その場でのやり取り、議論になりませんから。
個人的には質問して回答があり、それを受けて再質問というような聞き方をすることがあるのですが、これができないということか。
逆に言うと、いろんな主張の方もいるのでその場でのぐちゃぐちゃした議論みたいなのを避けているということかな。ここは議長の差配でうまくさばいてくれたらいいと思うのですが・・。
某動物愛護団体対策もあるのでしょうね。
再質問できないのは残念です。