味の素株主総会2024(3)(★★★★☆)

株主総会・説明会

質疑応答の続きです。
今回がラストとなります。

質疑応答(3)

【質問8】
3万4千人従業員がいらっしゃる中で、労働災害に関して、年間どれくらいの件数があるのか、どのように上がってくるのか、場合によっては隠してしまうこともあるのかといったことにつき教えていただきたい。


(藤江社長)
安全が第一という考え方であり、今年の3月にも全世界のリーダーが集まる会合があったが、その中でもう一度この考え方を確認し合い進めている。
まだまだ課題はあり、「終わりなき旅」ではあるが、具体的な取り組みを含めて香田からご説明申し上げる。

(生産統括:香田執行役専務)
労働災害については、会社としても第一プライオリティであり、災害をゼロ化しようという取り組みを過去から続けてきている。
グループ全体では重大災害というものを定義していて、これを削減することを一つのKPIとして取り組んでいる。
動いている機械に巻き込まれないにするといったハード的な対策、危険を正しく認識することといった基本的な活動、職場の風土として「安全に今日一日、仕事をして帰ること」を心から感じられるような取り組みを、各地で一所懸命やらせていただいている。
エンドレスな取り組みであり、完全にゼロ化できていないことは申し訳なく思うが、安全に関しては経営会議でもかなり大きく取り上げられるし、私も取締役会ではきちんと報告し、内容についてももっとやるべきだという激励もいただいている。
いずれにしてもゼロを目指して取り組んでいくということは我々としても宣言しているので、引き続き応援いただきたい。

【質問9】
海外売上比率がどれくらいで推移しているのかということと、為替の影響、つまり1ドル、1ユーロ1円動くとどの程度売上高・営業利益に影響があるのかを教えていただきたい。


味の素は日本の食品から始まった会社の中では比較的海外比率が高く、約6割が海外、国内が約4割。
B2Cは7割、B2Bは3割であり、バランスがユニークで、ある意味安定した会社であると思う。
為替の感度は、2024年度は1ドル=140円で考えているが、1円円安になると80百万円程度、事業利益はプラスになる
これまで為替のヘッジ等々で、為替の変動があってもできるだけ影響を受けないような取り組みをしてきたが、若干円安がプラスに働く面はある。
ただマイナス面もあるので、常に事業構造を強くしたり、生産性向上の取り組みを行ったりすることを、「終わりなき旅」としてしっかりとやり切ることが大事だと考えている。

【質問10】

  1. 独立社外取締役の八田陽子さんの略歴を見ると、2015年から小林製薬の社外監査役を現在までやっておられ、今回味の素の社外取締役も継続してやられるとのこと。
    指名委員会で人事を決める時に、どういう評価をされて決められたのか、我々に納得できるように説明して欲しい。

  2. 営業機能の社内的位置づけに関して。
    営業の方のモラルや営業出身の取締役の割合がどんどん下がっているように感じられる。
    営業に関して(特に国内営業)、どういう考えをお持ちなのかお聞きしたい。

2⇒
(藤江社長)
日本の営業部門は非常に重要だと認識している。
私自身も、国内だけでなく中国・フィリピン・ブラジルで営業をやってきたが、お客様と最前線と接するのが営業なので、お客様や社会がどのように変わっているのかをしっかり把握することが大事だと思っている。
その中でとりわけ日本の営業についてのご心配がおありかと思う。
日本の人口減・高齢化があり、日本の食品市場全体としては少し小さくなっていくことは考えられるが、+αでインバウンドの方々がたくさん来られ、日本の食が凄くいいなということで買っていただいたり、輸出も増えているということがある。
日本の営業メンバーについても、日本の自分達のテリトリーだけと考えるのではなく、より幅広い形で自分達のパフォーマンスが活きてくる方法があるのではないかと思う。

私もお客様との会にはよく出ていくし、営業部門のメンバーともよく話をする。
特に味の素が取り組んでいる、社会課題を解決しながら経済価値=儲けも出していこうということでいくと、例えば減塩の取り組みとして「スマ塩(Smart Salt)」というものがある。
これは大都市のみならず地方都市も含めて、42か所の行政の皆さんと政策協定を組み、我々味の素グループ・行政の皆さん・量販店・流通の皆さんとともに、地域の社会課題を解決していこうという取り組みがある。

一時期、日本の国内食品の販売も落ちていた時期があったが、2023年度の後半から数量ベースでも増加に転じてきている。
とりわけ、創業の製品である「味の素」が伸びており、これも営業の力の一つかなと思う。

1⇒
(指名委員会委員長:中山独立社外取締役)
招集ご通知のP.25の注6に詳細が記載されている。
(内容省略)
以上のような状況から、指名委員会として八田陽子氏が社外取締役候補者にするに相応しいと判断した。


ここで随分と時間が経過してきたので、あと2人とさせていただきたい旨のご発言がありました。

【質問11】
食品事業について2つ。

  1. 今後の成長は既存のオーガニックで図っていくのか、M&Aを使うのか?
    M&Aについて考えていることがあれば併せて教えていただきたい。
  2. 冷凍食品事業は2023年度はかなり盛り返してきたとはいえ、利益率は他に比べると高くない。
    事業ポートフォリオを見直した際、冷凍食品事業の撤退や売却の可能性はあるのか?
    あるいはコア事業として頑張っていくのか?

(2つ目は中長期的に気になる点で、なかなかいい質問だと思いました。)
(食品事業本部長:正井執行役専務)
1⇒
オーガニックもM&Aも、どちらも必要。
M&Aについてはこの場では申し上げられないが、今後の事業の成長において必要に応じてやっていく。

オーガニック成長が重要である、まだまだいけるという話をさせていただく。
私はアミノサイエンスで経験を積んできた人間だが、2年前に指名をいただいた。
非常に強く感じたのは、人数及び売上高の割合において、味の素で食品事業の占める割合が大変高い。
一つ一つの事業、一つ一つの法人がやっていることは大変素晴らしいが、組織が大きいのでそれぞれに壁ができてしまっていると感じる。

ただ、その壁をつなぐことで新たな価値が生まれてくると考えており、オーガニック成長をするための新たな社内の取り組みとして、「オーケストレーション」と呼んでいる、壁を越えた活動をたくさん仕掛けている。
具体的なことを申し上げると、日本の国内事業においては組織が大きいがために製販の連携があまりできていなかった。
企業にとって当たり前のことであるが、それをもう一度ちゃんとやって、工場の稼働率を上げるために営業がそこに参画する、といったようなこと。
他にもたくさんあるが、オーガニック成長はまだまだできると考えており、それを成し遂げていきたい。

2⇒
冷凍食品については確かに利益率は低い。
ただ、米国企業を買収して非常に苦労していたが、先人が頑張った成果が出て2023年度は大幅な利益成長ができた。
買収後の構造改革は終了したと思っているので、これからは成長路線で行けると考えている。
日本においても、主力の餃子のみならず、業務用中心ではあるがスイーツ事業が非常に利益率を高めてきている。
冷凍食品も、これからの味の素グループの利益を牽引していけると確信している。

【質問12】
ABFが半導体生産のボトルネックになっていることを知ったときに、もっと買っておけば良かった。(会場笑)
「半導体不足になったのは味の素のせいだ」というのは、本当なのか?
数年後、ABFのように話題になるような、今後これをやっていきたいという戦略的な事業があれば教えていただきたい。
バカな質問ですみません。


いえいえ、大変素敵な質問をありがとうございます。
味の素のせいで半導体不足になったというような事実はございません。(会場笑)

ABFは在庫も含めて、お客様の需要にしっかりとお応えするということで設備も拡充していた。
噂にしていただけるということは、ブランド力がついた証左でもあるかなと思う。
これからも生産能力不足にならないよう、あまり大きなものは必要ないが、ネックになるところを底上げしながら能力を高めていきたい。

次の成長ドライバーについては、2つご紹介をさせていただく。

一つは、遺伝子治療薬を含めたCDMOのビジネス。
特に花開いているのは、オリゴ核酸。
この市場自体が大きく伸びていて、2030年頃には2兆円になる。
そこにかかるCDMOも4,500億円くらいになる。
その中で「AJIPHASE」という、味の素にしかできない技術を持っているので、これを活かしたバイオファーマサービスが一つの柱となる。

もう一つは、私は「餃子を世界にもっと広めたい」と思っている。
2023年度は、トップシェアである日本の売上を、米・欧を足した売上が抜いた
かつ、海外の方が日本の3倍くらいの値段で買っていただける
そして、日本食を召し上がった方が自国に帰られて、「日本で食べた餃子はうめえなあ」ということでどんどん広がっているので、こちらも成長ドライバーにしていきたい。

今二つだけ挙げさせていただいたが、本当に多くの面白い技術やノウハウがある
研究開発報告会では、「これは5年後楽しみだね」「10年後化けるね」といったものがたくさんある。
こうしたものを含めて、2030年にはEPSも3倍にしていこうと思っているので、ぜひぜひ買い増しも含めてご検討いただければ幸いでございます。(会場笑)


以上で質疑応答は終了。
(11:49)

議案採決、新任取締役紹介を経て、閉会となりました。
(ここまで完璧な運営でしたが、最後の最後、役員一同の礼が揃わず、やり直しをしたのはご愛嬌です 笑)
(11:52)

所感

藤江社長のモチベーターとしてグループを牽引していることが容易に想像できる、熱意あるお話しぶりはもちろんのこと、他の役員の皆さんも硬軟織り交ぜた株主との対話が高いレベルで成立しており、運営に大変安定感があり、株主として安心感がありました。

株主総会としての一つの完成形を見る思いで、さすが味の素といった感です。

ただその反面、求め過ぎなのかもしれませんが、個人的には特段サプライズ感のある新しい情報は得られなかったというのもあり、評価は少し迷ったのですが、★5つ寄りの★★★★☆とさせていただきます。

全方位に安定感があり、隙の無い企業という印象です。これもさまざまな困難を乗り越えてきた、長い社歴の成せる業なのでしょうね。
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