味の素株主総会2024(2)(★★★★☆)

株主総会・説明会

質疑応答の続きです。

質疑応答(2)

【質問3】
(某動物愛護団体)を代表して。
2023年度の株主総会において、食品・調味料には動物実験を行っていないと主張していたが、実際には行われていた。
(以下、ラットの生々しい描写がありましたが割愛。)
この重大な動物愛護ポリシーの違反について説明して欲しい。
(その後、動物実験の廃止を求める団体としての主張が延々と続く。)

(藤江社長:できるだけ多くの方にご質問いただきたいので、簡潔にお願いします。)×2

失礼しました。質問は2点。

  1. 法律で明確に義務付けられていない動物実験を止めていただけるのはいつになるか?
  2. デイヴィスさんには、世界から見た味の素の動物実験ポリシーに対する考え方、そして今後世界的な潮流の中で止めていくべきではないかということについて、意見をお伺いしたい。

(総会会場の入り口でも抗議活動をしていました。)

1⇒
(佐々木執行役専務)
味の素グループの動物実験についてだが、食品以外にも幅広い事業を展開している。
動物実験を実施しているのは、ヘルスケア領域における医薬関連素材あるいは新機能素材が中心で、法的要請が無い限り、調味料・加工食品・冷凍食品・飲料の製品では動物実験を実施しない。

オリジナル新素材や新機能を生み出し、社会課題を解決することは、味の素グループのパーパス実現に向けて重要な活動と考えている。
そして素材の安全性・機能性は、科学的に証明する必要がある。
その証明にあたり、動物実験に代わる方法が無い場合に限り、国際的な倫理原則を重視して必要最小限の動物実験を実施することがある。

先ほどご質問いただいた件は、食品の素材開発の中で実施しているものと理解しており、製品における実施ではない。
また、先ほど動物実験の様子についてご意見があったが、私共はそのような実験は行っておらず、倫理に基づいて動物を扱って実験をしている。
ご質問については、歪曲が含まれた表現ではないかと考えている。

対話については、私共は基本的にはNPOの皆さまとは対応させていただくが、例外として冷静な対話が成立しない団体、例えば従業員やその家族の安全にリスクを生じるものや、イベント等で当社活動の妨げになるような行動をとる団体とは、対話はしない

(藤江社長)
一人一回、2問までとさせていただくので、これ以上のご質問は受けられない。
(このような質問を想定していたのでしょう、抜かりないですね。)

2⇒
(デイヴィス独立社外取締役)
「安全を確保するために動物実験を行っている」と私は理解している。
専門家ではないので、法的にどれほどの実験が必要なのかは詳しくは分からない。
ただ一個人として社内の色々な方と対話している中では、動物実験をしたくてやっている人には一人もお会いしたことはないし、役員の中では技術の進歩が進んでこういうことをしなくて済む世の中になるといいよねという思いは共通している。
皆さまの動物を解放しようという強い思いも分かるし、その点は共感する。
大きな課題として、現時点で味の素の方針が、内容そのものよりはどうやってできているかが重要だと思うが、専門の委員会が外部の有識者の意見を聞き、助言を受けて策定されているものであることを聞いている。

(藤江社長)
お話させていただいたように、できるだけ動物実験を行わないように代替案は無いか、洗練されたものにならないかということでやっている。
また、動物愛護団体の皆さまとは、しっかりとお話のできる所とは、これまでも色々な交流・議論はさせていただいたし、どのように代替法が進化しているかということも研究している。
ただ、私は社長として社員を守る責任がある。
例えば、社員の自宅で社員あるいはご家族が物凄く恐れを感じるような届け物をされたりする、そういった団体とは、社員を守る意味でもお話はできないということだ。

→ まさに毅然対応ですね。シビれます。この質疑の場面だけは、藤江社長の顔つきも変わっていらっしゃいました。

【質問4】

  1. 取締役の中の女性が1/3以上だが、最近は数だけ揃える会社もある。
    この1年間で、女性の意見がどのように尊重され、反映されているのか?
    来期は紙の資料で、そういったことも織り込んでいただけたらと思う。

  2. 社員や消費者を笑顔にすることを目標とされているが、社員を笑顔にするためにどのような努力をされているか?
    私も高齢者なので色々いただこうとすると重くなってしまうため、セットになっていて温めて一食になるような商品を開発していただき、私たち消費者も笑顔にして欲しい。
    利益率は必ずしも高くないかもしれないが、社員と消費者の健康と生活を支える会社であって欲しいと願っている。


(2に関して)(藤江社長)
冷凍食品で、ご飯の上にお野菜・おかずを乗せた、「あえて」という、まずはインターネットで販売させていただいているものを作っている。
これはインターネットのみならずチラシ等々でも対応できるようにしていきたい。
仰っていただいているように、一食でおいしくて、栄養価も高く、塩分も抑えているようなものはお客様のニーズも非常に高いため、お客様の声も含めて開発に活かし、今後できる限りの対応をしていきたい。

(ダイバーシティ・人財担当:栢原執行役)
登壇させていただいている栢原・森島が(女性として)経営会議に出させていただいているが、意見が通りにくいと思ったことは一度も無い
フラットで、言いたいことを言ってもきちんと聞いてもらえるということで、そこはご安心いただきたい。
職場に関しては、女性管理職の比率で言うと日本は特に低いということで、2030年までに3割になることを目指して取り組んでいるところ。

社員を笑顔にするという点では、「味の素グループで働いていると成長できる」「ここで働くと楽しい」「世の中に貢献できる」といった、成長実感、役に立っているという実感を社員が持てると笑顔になるし、働きやすさを推進する上ではフレックスタイムをもっと使いやすくする等、制度を拡充していくことが大事。
女性に限らず、働きやすさを追求していくことで、誰もが働きやすくなれば、皆が笑顔になれる会社になるのではないかということを期待し、頑張っていきたい。

【質問5】

  1. 食品のイメージであった味の素の、半導体関連の利益に占める割合と95%というシェアの高さに驚いている。
    他の会社が入ってこないのは、追いつけない技術があるのか?
    盗むような国もあるだろうし…
    それとも、設備投資にカネがかかりすぎ、薄利多売なのか?
    御社の場合はどちらか?
    一番聞きたいのは、競合先が出てくることに対する恐れは無いのか?

  2. それから半導体関連は利益の割合が高く、浮き沈みが激しい。
    乞食か大儲けか(会場笑)
    味の素のイメージは、食品で安心安全で、着実に積み上げていく企業イメージを持っていて、浮き沈みが激しい半導体は社風に合わないと思っている。
    場合によっては止めてしまうという選択肢もあろうかと思う。
    議論された結果があっての現在の姿なのかということを教えていただきたい。

1⇒
電子材料が高いシェアと大きな伸びを示しているのは、高い技術力があるから。
高い技術力にあぐらをかいていては絶対にいけないという危機感は物凄く強い。
他社も技術開発するというのは仰る通りなので、常に先頭をぶっちぎりで走り続けるんだと、そのための取り組みができるのかということを、しっかりと現場サイドも経営も見ている。
併せて、当社だけではなく、先進的に取り組まれている方と共同開発もさせていただく、それによって技術が先進的になる時に、しっかりと我々も付いていける先端の分野に、研究開発も身を置いているところが特徴かと思う。

2⇒
一見、味の素の食品と電子材料とは関わりが無いように見えるが、実は根底のところで繋がっている。
アミノサイエンスと呼んでいるが、アミノ酸の働きに徹底的にこだわってきた技術・素材が、味の素グループの大切な財産となっている。
このアミノサイエンスは食品にも使っているし、冷凍食品にも使っているし、電子材料にも使っているし、医薬開発の製造受託にも使っている。
研究陣は同じ研究所の中で一緒に研究したりすることもある。
ベースのところでかなり共通点があり、それが強みになっている。
電子材料はこれからもグループの成長を牽引してもらえる大切な事業として考えていきたい。

(質問者:根っこは同じということですね?)

仰る通り。
もっと強くしていく。

【質問6】
LaboMe」の件でお伺いしたい。
昨年立ち上がって、「流石、味の素」だなと思った。
サブスクのコンセプトは非常にいいと思ったが、数か月前に中止となった。
開発した人も若い方だと思うし、挑戦する姿勢が表れていたと思う。
中止になってしまった後、ある種の「志」を持って取り組まれたことに対して、そのチームがどうなったのか、さらにはこのように挑戦した方々に対してのフォローはどうされているのか?


「手挙げ式」で新しい事業を始めてみないかと募集した、そのテーマの一つが、「LaboMe」であった。
残念ながら、上市はしてみたものの、事業的にこのままで拡大はしづらいだろうということで中断はさせていただいているが、ここで大変な無形資産が培われたと思っている。
挑戦をしていく時、新しいことを始める時に、どういうことが必要だったのか、何がうまくいって何がうまくいかなかったのかということをしっかりと振り返り、この無形資産を次に活かすことが大事。

まだまだ味の素グループとして、既存の事業から離れた事業、いわゆる「両利きの経営」と言えばいいのか、既存事業の深掘りと併せて、全く新しい事業をどう始めたらいいのかについては課題がある。
この辺りは特にR&B企画部が中心になって取り組んでいて、 今日夕方にはメンバーと対話をすることになっている。
味の素グループが新製品開発・新事業開発により成功するために必要なことは何か、経営としてどういうサポートを行いリーダーシップを発揮していくのかといったことについて、しっかりと対話をしながら取り組みを進めていきたい。
ご期待いただければと思う。

【質問7】

  1. 昨年、米国のベンチャー企業を買収されたが、遺伝子治療薬について夢のある話をお聞かせ願いたい。
  2. 斉藤執行役常務にお伺いしたい。
    唯一生え抜きではなく、みさき投資他、色々なキャリアをお持ちだが、味の素という会社をどのように見ていて、意識してどのような点に関して経営に助言しているのか?

1⇒
(藤江社長)
遺伝子疾患で苦しみ(うまく成長できない)、命を落とされる方が世の中にたくさんいらっしゃる。
遺伝子そのものに作用し正常な遺伝子にすることで、普通に生育できるようになる。
(買収した)フォージ社は遺伝子治療薬のCDMO(製造受託)に非常に長けた企業で、以前から技術のやりとり等、お付き合いをしていた。
紹介を受けて、ということではない。
まだまだスタートアップの企業で設立して4年程度だが、既に多くのパイプラインを持っていたり、色々な認可も得ている。
2025年にようやくEBITDAで黒字化ということで、2023年・2024年は赤字だが、遺伝子治療分野は本当に大きく伸びてきていて、そこのトップを争う企業の一つ。
「志」のある会社と一緒に組ませていただき、2030年に向けて大きく成長させていきたいと考えている。
ぜひご期待いただきたいし、適宜状況の報告はさせていただく。

2⇒
(斉藤執行役常務)
まず、こうして外でキャリアを積んだ人間を中に入れるという、味の素という会社の素晴らしさを感じる。
D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)という面でも、外部で色々な経験をしている人間を中に入れることによって、経営会議や取締役会を変えていくということを経営陣が考え、私を入れたのだと思う。

味の素はご存知のように歴史が長い会社で、このような会社は内部の論理・過去の論理に囚われる部分は多々あるのだが、私はそのようなしがらみのない人間なので、そういった囚われのない色々なお話をし、働きかけをすることによって、よりフェアで、前を向く議論をすることに貢献をしていくつもり。
(会場拍手)

(続く)

サステナビリティ関連も含めた、質問のジャンルが幅広いですね。そしてそれに真摯に対応する経営陣の姿。大変勉強になります。
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コメント

  1. 伏見の光 より:

    株主総会の質疑のところは各社それぞれ興味深いですね。
    こちらは3月決算のところで参加したのはキーエンスとイーデイーピーの2社のみでした。
    いずれも、広い意味で面白かったです。

    味の素の動物実験のところでは2395新日本科学のIRセミナーの話を思い出しました。
    まさにカニクイザルでの動物実験そのものが事業の柱となっているところです。
    ここなどもっと激しい抗議の対象になっていそうですし、その経験がIRセミナーにも出ていました。
    https://fusiminohikaru.net/archives/64543

    • 6_suke より:

      キーエンスは相変わらずのようですね。

      • 伏見の光 より:

        独自の企業文化なり価値観を持つのはいいのですが、分割については市場の要請には応えず、またもな説明もしないというのはやはりいただけないです。また来年、聞き方を考えて聞いてみましょう。

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