味の素株主総会2025(2)(★★★☆☆)

株主総会・説明会

(真ん中のボードが、味の素ならではだなと感じてしまいます。)


それでは質疑応答です。


質疑応答(1)

(理解促進のため、構成・内容には若干手を加えています)

中村社長が一旦受け、内容に応じて管掌の役員にバトンタッチするスタイルでした。


まず、インターネットで受付した事前質問のうち、特に関心の高かった事項についての説明がありました。

【事前質問1】
フジテレビのCM差し止めの影響と、 今後の広告施策について


フジテレビでのCMは中止したが、広告コミュニケーションそのものは他の放送局や他メディアで継続をしているため、売上への影響は無いものと考える。
テレビCMは今後とも重要な広告メディアとは考えているが、 生活者のメディア接触状況の変化や商品ブランドの課題に合わせて、適切な広告メディアの活用を模索していく。

【事前質問2】
女性の社内取締役について


男女問わず適材適所での登用を実践していきたいと考えているが、現在は過渡期という位置付けで、意識して女性の適任者を継続的に育成し、将来に向けてのパイプラインを強化している。
2025年度の執行体制においては、新任執行役3名のうち2名が女性。
さらに2030年度までに女性管理職比率30%とすることを目標とし、「AjiPanna Academy(アジパンナ・アカデミー)」等の女性人材への機会提供・育成支援施策を実施し、女性管理職の母集団形成を推進している。
2024年度のエンゲージメントサーベイでは、女性従業員の53%が上位職位への意欲を示している。

【事前質問3】
電子材料事業の状況、中期展望と課題、今後の施策について


電子材料事業は2025年度も順調にスタートを切った。
半導体市場動向は生成AIを中心に需要拡大が予測されている。
またPC市場では回復の兆しが見られ、汎用サーバー向けの緩やかな復調も見込まれることから、引き続き事業成長が期待できる。

米国の追加関税政策等の世界経済への影響は懸念材料であるが、現時点では電子材料事業への直接的な影響は見られていない
サプライチェーンにおける関税分の価格転嫁の動向、半導体関連企業の工場移転や調達先変更の動向や、世界経済の低迷による景気後退が半導体市場に与える影響については、引き続き情勢を注視していく。

今後とも、安定した品質で製品を確実に供給し、さらに将来的な需要拡大に応えるために適切な投資判断を行いながら、計画的に生産設備の増強拡大を進めていく。
高いシェアと成長は高速開発システムの着実な運営実践によるものであり、 各ユーザーが求める高い要求レベルに応え続けることは、味の素グループの資産となっている。
今後も顧客満足度を高め、電子材料事業をさらに発展させていく。

→ 赤色の下線を引いた箇所がポイントですね。この後のご発言からも、中村社長のこだわりが感じられました。


ここで会場からの質問に入ります。
できるだけ多くの株主様のご質問をお受けしたいとのことで、「お一人一回一問限り」とさせていただきたい旨の申し出がありました。

(中村社長は関西の方ということもあり、複数質問用意する中でちょっとくだけた内容のものも紛れ込ませていたのですが、これを受けて諦めました。なお、前回は「一回二問まで」でした。)

【質問1】
冷凍食品事業がちょっと気になっている。
他の食品や電子材料に比べて、利益率が8%程度と低い。
日本で消費者の立場からすると、冷凍食品はやっぱり安い時にしか買わない。
米で大騒ぎしているこのご時世、メーカーさんの求める価格ではなかなか買いづらい。
常時値引きでやられている。
アメリカの方でかなり利益は取られているようだが、冷凍食品の今後をどう考えているのか?


国内は原料価格高騰を企業努力では吸収しきれず、値上げを行ったということもあり、非常に価格競争の厳しい市場においてやや苦戦している。
ただそれでも弊社の餃子は、「おいしさ設計技術」に基づいた確実なおいしさと、さらには史上最高にきれいに焼ける餃子ということで、非常に料理のプロセスにも技術的にもこだわった製品となっている。

今後はさらに栄養価値向上技術を加え、値段だけではないお客様への価値を訴求をしていきたいと考えている。
事実、レンジで温めるだけの焼き餃子が非常に好評。
通常のレンジであると皮が硬くなるのだが、それでも柔らかさが維持できる当社の技術が発揮された実例。

海外は日本よりもお客様の価値に見合う価格設定ができており、米国を中心に増収増益を続けている。引き続き餃子を中心に、アジアの冷凍食品、焼きそば、チャーハン、焼き鳥などもあるが、しっかり技術で美味しさを追求し、事業の拡大を目指していきたい。

さらにASEANと、ラ米(ラテンアメリカ)について述べさせていただく。
私はブラジルで3年間社長だったが、ラ米でも餃子をスタートさせ、ASEANとラ米は共に既に売上が2桁成長している。

弊社の餃子は、東京オリンピックのアスリート村で「世界で一番美味しい餃子」とSNSで発信をしていただいた。
ブラジルでもこれは凄いという反響があったので、 この美味しさをグローバルに拡大していければと考えている。

→ 私の家でも調理後の見映えを含めたその完成度の高さから、味の素の餃子は常備させていただいております。

【質問2】
決算説明会では中村社長より「2030ロードマップ」の1年前倒しに挑戦する旨の、大変意欲的なご発言があった。
そう申し上げられるだけの現状の手応え、根拠をお聞かせいただきたい。

(私からの質問です)


我々の掲げているASVの経済価値指標には、ROE・ROIC・オーガニック成長率・EBITDAマージンがあり、現在順調に進んでいるものもあるが、ROICなどは設備投資の状況や成長のための投資で多少上下する部分がある。
ただ挑戦的な目標に向けて、数値にこだわって達成を目指していきたい。

既存の事業をしっかりと伸ばしつつ新しい事業を生み出すことで、売上高を伸ばしながら事業の効率を高め、オーガニック成長率及びEBITDAマージンにはしっかりこだわって、高速開発システムの名の通り、前倒しで達成することに挑戦していく。

→ 現状の事業環境を踏まえた手応えについて聞きたかったのですが、ちょっと趣旨が伝わらなかったのかなという印象です。ただ中村社長の数字へのこだわりとスピード重視の姿勢に関しては、明確に伝わってくるものがありました。株主としては頼もしいですね。

【質問3】
(昨年同様、某動物愛護団体より。主張が長く、制止が入るほどだったので要点のみ)
動物実験を段階的に廃止するための、具体的なアクションプランを策定する必要がある。
今年こそ脱動物実験への転換を約束いただけないか?


(コーポレート本部長 佐々木執行役専務)
オリジナルの新規素材や素材の新機能を生み出し社会課題を解決することは、味の素グループの志、パーパスの実現に向けて重要な活動であり、その素材の安全性や機能性を科学的に証明する必要がある。
その証明にあたり、動物実験に代わる方法がない場合に限り、国際的な倫理原則である三つのことを遵守し、必要最小限の動物実験を実施することがある。
その三つのこととは、一つ目は動物実験に代わる方法の検討、二つ目は最小限の動物の使用、そして三つ目は苦痛を最小限にとどめる手法の選択になる。

味の素グループは食品事業以外にヘルスケアなど幅広い領域で事業を展開しているが、動物実験を実施しているのは、主として医薬品関連の素材と新機能素材。
また一部の素材において、安全性や機能性を科学的に証明することが必要な場合で、動物実験に代わる方法がない場合に限り、調味料、加工食品、冷凍食品飲料の製品では必要最小限の動物実験は実施する。

また、ホームページにも掲載している動物実験最小化に向けての考え方に従い、その取り組みを積極的に進めており、近年は動物実験の数は大きく減少している。
動物実験の代替法の学会に参画し、新たな技術を独自開発し、有用性や安全性、評価における動物実験の代替法の導入も推進している。

先ほど株主様よりご説明のあったアメリカの事例は、FDA(アメリカ食品医薬品局)の近代化法2.0において、動物実験の代替法がある場合に限り代替を認めるという内容。
残念ながら、全ての方法に動物実験の代替が確立されていないと認識しており、最新の規制情報や動物実験代替の情報を常に把握し、いち早く技術導入に励んでいることを申し出させていただく。

ご回答は冒頭に申し上げた通り、本件一回限りとさせていただく。

【質問4】
経営スローガン「ちゃんと考えて、ちゃんと実行する!」のご説明があったが、やはり現場の方との対話が重要と考える。
中村社長はダイレクトコミュニケーションに関してどのような考えをお持ちか?


コミュニケーションは非常に大切と考えている。
ブラジル味の素の社長の時は、全ての管理職と10名ぐらいの単位で、1時間半ぐらい対話会を繰り返してきた。
自己紹介と「今あなたが考えている、この会社で成し遂げたいこと」「それに向けてのハードルは何か?」という二つだけの質問で一時間半ほど議論し、その後、ランチボックスを食べるといったことを全管理職とやってきた。
その後、一般職の皆様とも手挙げ制でやりたい人から話を聞き、いろんな話をダイレクトにし、可能な限り改善できるものは改善し、できないものに関してはあのアドバイスをして、ハードルを緩和するというようなことをやってきた。

日本では2月3日の就任以来、徐々にその対話会をスタートしており、国内はもちろんのこと、先週は味の素ポーランド社に行って事務所と工場の2カ所でその対話会を行ってきた。

引き続き、営業、研究開発、工場、オフィスすべての部署で可能な範囲で対話会を行い、ダイレクトに従業員の声を聞き、それを企業価値向上につなげていきたいと考えている。

→ 中村社長は現場との対話を非常に重視する方のようですね。

【質問5】
電子材料事業はニッチな世界のことをやられていて感心しているが、食品事業とのシナジーはあるのか?
また、電子材料事業を伸ばしていこうとすると、他の会社とのタイアップ等必要になると思うが、その辺りの考え方をお聞かせ願いたい。


電子材料は、もしかしたら外に展示しているパネルをご覧いただいたかもしれないが、根っこはアミノ酸の技術である。
アミノ酸を化学合成していた時の技術が残っていて、現在は当然全て(天然の仕組みである)発酵法で作っているが、その化学合成のケミストリーを活かして生まれてきたのが、今のエポキシ樹脂用の硬化剤。

ABFのメインになっている接着部材がエポキシ樹脂と硬化剤になるが、この硬化剤がアミノ酸を使った技術から生まれてきている。
それをさらに接着剤や、フィルムの高付加価値のところで挑戦していこうと考えたのは、私が入社した頃、ちょうど1992年ぐらいの話。
根っこはそういう意味では全く同じ。

さらに、化学を使ったアミノ酸のケースでは、例えばアミノ酸用の界面活性剤。
アミソフトというシャンプー等に入っている成分や、さらに医薬中間体の技術へとどんどん幅を広げている。

電子材料は大手の半導体メーカー様に採用されて以来ずっと、その材料をアップデートしたり機能アップしたりしていて、26年間勝ち続けている。
先ほど電子材料の高速開発システムの型は他にも使えるというご説明をさせていただいた。
事業的には元々、初めてこの電子材料をお客さんに紹介した時には(新参者の)味の素の作ったこの材料がいいわけないだろうと言われたが、「やはり食品で培っていただいたブランドでもあるわけだし、一度は評価してみよう」「味の素という名前を出しているんだから、変なものは無いだろう」と考えていただき、評価をいただいていい結果が出、現在へとつながっている。

また、実は電子材料というものは本来室温でしか保管できないものだが、我々は冷凍食品のビジネスを持っていたために、冷凍物流というものを非常に当たり前のように考えることができ、冷凍保管しかできない高性能な絶縁体を作ることができた
これが非常に性能が良く、大手半導体メーカー様に採用され、お客様は皆冷凍冷蔵庫を導入してくれたという経緯がある。

この発想のレベルにおいても、味の素の多様性が活きたところなのではないかと思う。
半導体の材料と食品のシナジーに関しては、サイエンスベースではシナジーがある。
新たな電子材料として、生体適合性のある材料だとかいろいろな用途が期待されており、味覚をよりエンハンスできる機器だとか、そういったところに新しいテーマもあるのではないか。

→ 電子材料事業の立ち上げ時のストーリーをここまで雄弁に語れるのは、中村社長ならではですね。

(続く)

「ちゃんと、ちゃんとの味の素」。私の世代的に1990年代の牧瀬里穂さんを思い出しました。たくさんのポチ、ありがとうございます。
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コメント

  1. 伏見の光 より:

    ご報告ありがとうございます、こちら、大阪での試食会に参加させてもらったぐらいで総会にはなかなか行けません。

    そうですか、「動物愛護」団体の人の発言があるのね。

    鹿児島に本社がある新日本科学という会社はまさにこの動物実験用のカニクイザルを扱っていてその大規模コロニーがあります。ここのIRセミナーに参加したことがあるのですが、社長は文化人のような独特の雰囲気。

    ただ、企業のサイトを見ても、直接的に動物実験云々について具体的にふれている部分はわずかです。
    なぜか聞いてみたら、様々な団体からいろいろなアクションがあるため、企業防衛という意味もあって・・、というような説明でした。

    中には違法な過激な行動をするような団体もあるみたいです。

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