今月は、「ファンクショナルマテリアルズ」(電子材料等)の好調ぶりが目立つ、味の素です。
同事業の好調により、中間期において通期業績予想の上方修正も行いましたね。
その主要製品であり、現代の半導体分野においてもはや必要不可欠な素材(層間絶縁材料)「味の素ビルドアップフィルム(通称:ABF)」の将来性について見ていきたいと思います。
(直近12/17に電子材料事業に関するIR説明会があったのが、当社を採り上げようと思ったキッカケです。)
ABFはどうやって「経済の堀」を築いてきたか。
私が当社への投資を開始したのは約2年前と比較的最近のことなのですが、ABFの存在、そしてこれを手掛ける子会社の味の素ファインテクノ(株)のことは、以前からずっと気になっておりました。
それは、2012年度ポーター賞受賞レポートを見ていたからです。
当社はバリューチェーンの中で、絶縁素材の性能を決める樹脂組成物である「ワニス」に研究開発と製造を特化しているということ、共創エコシステムを構成する全ての企業と密に連携することで顧客ニーズの先取りをし、それを開発に活かしていることに、まず興味を持ちました。
これにより、世界の最先端を走る顧客(大手CPUメーカー)が欲しがるであろう機能に対して、「先回り」で提案ができることになります。
また当時はハイエンドのCPUに特化していたのですが、後に市場が拡大してあらゆる機器にABFが使われ市場が拡大することを見越して「待ち伏せ」しておく作戦にもシビれました。
小さな池に大きな魚が居座っている状態であり、こうなると他社が入り込むのには困難を極めます。
まさに「経済の堀」ですね。
結果、現在ではABFは層間絶縁材料では95%超のシェアに至り、思い描いていた通りの展開となっております。
味の素ファインテクノ社の営業利益率も当時は30%台で推移していたのが、直近期は約46%と無双状態です。
ABFの将来性。

このABFは今後、使用量の飛躍的な増大が見込まれます。
なぜなら、自動運転やAIなどに使用されるハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)向け基盤は、パソコンのそれの10倍以上のABFを使用するからです。
上図左の通り、面積で3.5倍、層数で3倍、掛け合わせで10.5倍という計算になります。
HPCデバイスは2030年度まで出荷量が年率+約22%で伸び、かつ1デバイスあたりの平均ABF使用量も増えていくということで、「経済の堀」を持つABFは力強い成長も期待することができます。
投資アイデアとして。
バリューチェーンの「急所」を担っており、最先端を走る企業群とコミュニケーションを取りながらニーズの「先回り」ができる企業は強いですね。
半導体関連を中心に日本が得意とする部品・素材の分野では、こういった企業をいくつか見つけられるのではないでしょうか。
さらにそれが用途の広がりを「待ち伏せ」できるような企業であれば、鬼に金棒です。



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