山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』を読む。

読書

今まで読んだ中で、いちばんマーカーを引いた新書かもしれません。

本書のテーマは、経営における「アート」と「サイエンス」の相克です。

サイエンス(「分析」「論理」「理性」に軸足)だけに依存した情報処理は、経営の意思決定を凡百で貧弱なものにしてしまうというのが筆者の主張。

そこでアートがクローズアップされてくるのですが、その背景には以下のものがあるとしています。

  1. 論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある
    … 多くの人がスキルを身に付けた結果、「正解のコモディティ化」が起こり「差別化の消失」が発生。またさまざまな要素が複雑に絡み合うような世界にあっては、要素還元主義の論理思考アプローチは機能しなくなっている。

  2. 世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある
    … 人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要に。

  3. システムの変化にルールの制定が追いつかない状況が発生している
    … 内在的に「真・善・美」を判断するための美意識が求められることに。

実際、優れた意思決定の多くは「感性」「直感」がもたらしていて(「勝ちに不思議の勝ちあり」)、論理的に説明できないことが多いこと(「超論理的」)も、事例を挙げながら説明しています。

持続的な競争優位性の鍵は「差別化」ですが、過去は有効であったパターン認識力の高さがここで仇になるということですね。
何でも「ビジネスモデル」に当てはめるのも良くないかもしれません。


そして、日本企業が競争力を失っていった理由も考察しています。

私たち日本人の多くは、ビジネスにおける知的生産や意思決定において、「論理的」であり「理性的」であることを、「直感的」であり「感性的」であることよりも高く評価する傾向があります。この「論理的で理性的であることを高く評価する傾向」は、決してそれが「巧みである」ことを意味せず、むしろ私たち日本人が、権力者が作り出す空気に流されてなんとなく意思決定してしまう傾向が強いことへの反動で、一種の虚勢なのですが(以下略)


日本企業はサイエンス及びクラフト重視で「スピード」「コスト」を追求するスタイル(たいへん古いですが、アニメ・キン肉マンの牛丼音頭の「早いの うまいの 安いの~」は象徴的かも)で戦っていたわけですが、「正解のコモディティ化」が進む中、レッドオーシャンにおいて通用しなくなっていったのです。


「論理」「法律」「市場調査」から、「直感」「倫理・道徳」「審美感性」へ。

「主観的な内部のモノサシ」への比重の転換が必要な時代にあって、私たちが企業や経営者をどう見ていけばいいか、どう投資判断をしていけばいいか、たくさんのヒントが得られる本でした。

「文系脳投資家」を自認される方はぜひご一読を。


投資判断にも、ある種のアートが必要かもしれません。
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